ヘッドホン・イヤホンを識る

バランス接続とヘッドホンアンプ

バランス接続とヘッドホンアンプ

バランス接続とは?


ヘッドホンの音質を向上させる手段として、バランス接続というものがあります。 一般的なヘッドホンの接続方法は、アンバランス接続と呼ばれ、 左チャンネルと右チャンネルのグランド部分(信号が最後に行き着くところ)が共通になっています。 グランド部分が共通になっていることで、左右の信号がそれぞれ干渉してしまうことがあり、それにより微小なノイズが発生してしまうことがあります(クロストーク)。 これを避けるためには、左チャンネルと右チャンネルのグランド部分を別々に設ける必要があります。

バランス接続はこの課題を解決する接続方法で、
  • 左チャンネルと右チャンネルのグランド部分が分離されていてクロストークが少ない
  • 左右の音がきちんとセパレートする
  • 電位が安定するため、音の安定性が向上
  • スルーレートが向上するため、音のタイミングの正確性が上昇
などのメリットによってノイズを抑えた明瞭度の高い音を再現しやすくします。
なお、バランス接続を実現するためには、再生機器側ヘッドホン・イヤホンともにバランス接続に対応している必要があります。対応機器のプラグおよびジャックは、φ2.5mm、φ4.4mmの規格やXLRプラグなど、特殊な仕様が多く採用されています。
バランス接続用プラグ例

バランス接続が可能なヘッドホン


バランス接続関連アクセサリー

ヘッドホンアンプ


ヘッドホン・イヤホンで音楽を再生するために、人の耳に聞こえる音量まで音楽信号を増幅する機器のことをヘッドホンアンプと呼びます。 一般の音楽再生機器の中にヘッドホンアンプが内蔵されていることが多いですが、音質向上や接続性を担保するためなどに独立したヘッドホンアンプを使用される例もあります。
もっと詳しく
ヘッドホン専用のアンプ。このヘッドホンアンプを使用すると、なぜ音質が向上するのでしょうか?
音量が取りやすくなる
一般にアンプを使用すると音量が取りやすくなります。これはオーディオ用のアンプには定格回路という、入力電圧を増幅させる機能を持っているためです。ポータブル機器などに内蔵されているアンプはバッテリーの関係で、出力の弱いアンプ回路を使っています。インピーダンスの低いヘッドホンを使用すれば音量を取ることができますが、インピータンスの高い大型ヘッドホンを使用する際には出力が不足してしまいます。一般的なアンプはヘッドホンより何倍も重いスピーカーのダイアフラムを動かす用に作られています。そのため、そのまま使うと少しボリュームを上げただけで大音量となってしまいます。それらを回避するためにアンプ側のヘッドホン端子に電気抵抗を入れることでバランスを取っていますが、それにより音質が低下してしまいます。ヘッドホンアンプは電圧や電流がヘッドホンに最適になるよう設計されているため、音量が取りやすくその能力を最大限に生かすことが可能となります。
音の締まりがよくなる
ヘッドホンで音を再生する場合、ヘッドホンアンプを使用すると、締まった音質となります。これは、通常ヘッドホンで音楽信号を再生した際に、ダイアフラム(振動板)が必要以上に動いてしまう場合があるからです。
例えば1Vの電圧がヘッドホンにかかったときのダイアフラムが1mm前に動いたと仮定した場合、ヘッドホンへの入力が0Vになった時点で、ダイアフラムは元の位置に戻らなければなりません。しかし、慣性の法則が働き元の位置よりも後ろに下がってしまう場合があります。またその際、電磁石は電気を発生させてしまいます。このような場合、例えばヘッドホン側の入力をショートさせ0Vにするとマイナスの制動力がかかり、ダイアフラムは静止します。音源側の出力端子が0Vになるような安定性をもっていれば、ダイアフラムの制動力が強くなり、また起電力吸収することができます。
このような振動板の過度の振動を減少させる制動係数をダンピングファクタと呼び、「アンプの内部抵抗」として表されます。ダンピングファクタが低いという事は、抵抗がある→電流が流れにくい→ダンピングファクタが下がる→制動力が下がる、ということを意味しています。 ダンピングファクタ(DF)は[ヘッドホンのインピーダンス(Ω)]を[アンプの出力インピーダンス(Ω)+ケーブルなどの附加抵抗値(Ω)]で割った値で、数値が小さけれ制動力がなく音がブワつきます。大きすぎると制動しすぎで締まりすぎた音になります。
ヘッドホンアンプはヘッドホンのインピーダンスを考慮した出力設計になっています。そのためダンピングファクタも最適化され、締まったキレのいい音(特に低音)を再生することが可能となります。

ポータブルアンプ

ポータブルオーディオプレーヤーやスマートフォンは、サイズおよびバッテリーの関係や筐体上の理由などで、プレーヤー内部に使用できるアンプの種類が制限されてしまうことがあります。ヘッドホン・イヤホンによっては満足に出力が得られず、十分な音量を確保できない場合も。そんなときに使われるのが、プレーヤーとヘッドホン・イヤホンの間に接続するポータブルヘッドホンアンプです。プレーヤーからの音楽信号を増幅して、ヘッドホン・イヤホンを十分に駆動させる役割を持っています。

据え置きアンプ

据え置き型のヘッドホンアンプは、音楽信号を増幅させ、ヘッドホンを駆動させるために使われることが主な用途。また、ヘッドホン端子のない音楽再生機器でヘッドホンを活用するためにも使われます。一般に室内用途向けに設計された大口径ドライバーを搭載したヘッドホンは、十分に駆動させるために入力信号を大きくする必要があり、室内での音楽試聴にヘッドホンアンプを活用されるケースは 珍しくありません。

DACについて

デジタル入力に対応したヘッドホンアンプには、増幅する機能以外に、デジタル信号をアナログ信号に変換する機能があります。 これをD/Aコンバーター(デジタルアナログコンバーター)と呼びます。 デジタルデータで記録されているオーディオファイルを、人が聴くためのアナログ信号に変換する役割を有しており、 D/Aコンバーターの種類によっては、音質向上を図れることがあります。 より良い音質を実現するため、ヘッドホンアンプとは 独立したD/Aコンバーターの単体で販売されている製品もあります。
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