レコードをはじめとした「アナログ音源」とCDなどの「デジタル音源」はそれぞれのメリットや魅力を持っており、しばしば比較して語られがちです。

アナログ音源は温かみがあるけど保管したり再生したりするのに手間がかかる……といった意見を聞いたことがある方は少なくないと思います。

アナログ音源をデジタルで再現できれば、こうしたジレンマも簡単に解消できそうです。今回の記事では、そんな「アナログ音源をデジタルで再現できるかどうか」についてご説明します。

アナログとデジタルはどう違う?

以降の内容をより深く理解していただくために、まずはアナログとデジタルという概念の違いについてご説明します。

両者の仕組みを一言で表すなら、アナログは「連続的」、デジタルは「段階的」です。これだけではイメージがつかみづらいと思いますので、今回は時計を例にして考えてみましょう。

仮に現在が正午だとすると、デジタル時計では「12時00分00秒」といった形式で時間を表示します。そこから1秒経てば、「12時00分01秒」です。デジタルでは、このように情報を段階的に区切って表現します。

一方のアナログ時計は、時間に合わせて動く針で時間を表示します。秒針の動きによって、「12時00分00秒」から「12時00分01秒」に動く“間”も連続的に表現しているわけです。

オーディオにおけるアナログとデジタル

デジタル音の図

それでは、オーディオにおけるアナログとデジタルとはどのようなものなのでしょうか。

アナログ音源の仕組み

アナログ音源として代表的なのは、アナログレコードです。アナログレコードではポリ塩化ビニルや樹脂によって作られた盤面に、音溝と呼ばれる溝を刻んで、音の情報を記録します。

レコードには曲を演奏したときの音(=空気の振動)が物理的に刻まれており、レコード針がそれを読み取ることで音を再現するのです。波形のように連続的に情報を表現していると捉えておけば間違いないでしょう。

デジタル音源の仕組み

対するCDなどのデジタル音源では、曲の情報を数値として段階的に表現します。折れ線グラフと同じように、グラフ上に点をいくつも打ち、点と点を線でつないで情報を表すイメージです。

上記の例で考えると、点をたくさん打てば打つほど、それをつなぐことでできる波線はなめらかになります。時計の例で言えば、情報をより正確に表現するために「12時00分00.00092912…秒」というレベルまで細かく区切るというわけですね。デジタル音源では、この点の数=情報量は、「サンプリングレート」や「量子化ビット数」という言葉で表されます。

アナログ音源はデジタルで再現可能か

デジタル音の図

基本的な知識を押さえたところで、いよいよ本題に入りましょう。結論から言えば、デジタルでもアナログ音源に「できるだけ近い音」を再現することは可能です。

そもそも、技術的に考えると、デジタル音源のほうがアナログ音源よりも原音からの変化が少ないと考えられます。大前提として、デジタル音源のほうが品質が高いのです。例えばレコードでは、再生する際にレコード針とレコードが擦れる音が混じったりすることもあるでしょう。

しかし、ここで一つ疑問が浮かびます。皆さんは、このような意見を聞いたことはないでしょうか。「レコードの音は温かみがある」「CDの音は冷たい」といった、デジタル音源よりもアナログ音源のほうが優れているという意見です。

本来であればCDのほうが音を正確に再現するはずなのにもかかわらず、なぜこうした声が出るのでしょうか?原因としては、以下の2つが考えられます。

原因1:デジタル音源でカットされている高周波数帯の音

詳しい説明は省略しますが、CDをはじめとした従来のデジタル音源は、一定以上の周波数を持つ音をカットして記録されています。ここでは簡単に、「ものすごく高い音は記録されていない」と考えてください。

カットされている音は基本的に、人間の耳では聞き取れないほどの高さです。しかし、この高周波数帯の音が、音源を聴いたときの印象に影響するという意見もあります。

原因2:アナログ音源(レコード)を再生するときのノイズ

先ほど「デジタル音源のほうが品質が高い」「アナログ音源(レコード)はノイズが混じったりすることもある」と説明しました。しかし、このノイズこそがアナログ音源(レコード)の「温かみのある音」につながり、聴く人に心地良さを与えている可能性も考えられます。

聴いたときの印象を含めた「完全再現」は難しい

デジタル音源の技術はこの数十年で目覚ましい発展を遂げました。いわゆる「ハイレゾ」音源は高周波数帯の音もカバーしており、原音にかなり近い形で曲を再現することが可能です。以下の記事では、レコードをハイレゾ(デジタル)化する方法もご紹介しています。

とは言え、アナログ音源の魅力は、原音の再現度とイコールではありません。前述したノイズやレコードに針を落とす作業など、聴いたときの印象を含めた一連の体験にこそ、その魅力が詰まっているのです。

まとめ

今回の記事では、アナログ音源をデジタルで再現可能かどうかについてご説明しました。専門的かつ抽象的な内容が多くなってしまいましたが、少しでも参考になれば幸いです。

Words: neu inc.

SNS SHARE