日常的にマイクを使う機会が増えてきた。良い音で聴きたいと思うのと同じように、良い音で録りたいと思っても、いざマイクを使おうとなると、たくさんの種類があって、選ぶだけでも途方に暮れてしまう。話すのか、歌うのか、楽器を演奏するのか、使う人のシチュエーションもさまざまだ。
そこで、オーディオテクニカ「アストロスタジオ」のスタジオマネージャーが、マイクの基礎や使用方法、目的に合ったマイク選びを、簡単、簡潔に徹底解説。これでもうマイク選びには迷わない!
(第9回はこちら

▼第10回
「ボーカルのためのATM98 後編」

現場からのフィードバックで生まれた

ボーカルのニーズに応えるATM98のようなタイプのマイクは、どうやって開発されていくのですか?

うちはロックフェスティバルのサマーソニックにずっと協賛させていただいていて、色々なアーティストにも、サマーソニックが始まった時から協賛しています。様々なステージ、アーティスト、ジャンルが楽しめるフェスですから、そこから製品に生かしていきました。ロックからジャズ、ポップスからハードコアまで色んな音楽のジャンルを聴いて、耳にして、どういうマイクが良いのか、マイクがどういうふうに適してるのか、反応をヒアリングしました。本当に海外のアーティストにも愛されてるマイクなんです。あとは、カントリーに合うものだったり、ジャンル、シチュエーションに合わせたボーカルマイクがラインナップで揃っています。

フェスや実際の現場で使ったフィードバックから生まれたんですね。

それが一番の強みなのかと思います。CDなど音源だけ聴いて、それでどんなマイクを作ろうとはならないですよね。ちゃんとした現場のヒアリングがあって製品ができてくるので、その点ではサマーソニックというイベントは大事だと思ってます。

ライブでも色々なシチュエーションがありますよね。その違いに応えるだけでも大変に思います。

天候にしてもそうだし、ライブハウスの広さにしてもそうだし、色々なシチュエーションが、レコーディングと違ってライブは難しくて、サウンドエンジニアさんがいないライブハウスだってあるし、バーで自分で繋いでやるシチュエーションもありますよね。その時により使いやすいマイクとなると、ATM98はすごくストレス無く使えると思います。

その意味では、ATM98はオールジャンル向きですか?

そうですね、オールジャンルいけます。ボーカルだけじゃなくてもコーラスで使ってみたり、ドラムでも被りが少ないので、色んなシチュエーションで使えます。ギターアンプに使うのもありだと思います。

ATM98

ハンドヘルドマイクロホン

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アーティスト、エンジニアに愛されるマイク

アーティスト、エンジニアに愛されるATM98

今まで、本格的なマイクを使ってない人がATM98を使う場合、どういう点に気をつけたら良いでしょうか?

サイドから音が入らない設計ですけど、例えば大袈裟に言うと、ライブで走り回ったりしてマイクの位置まで戻ってきた時、指向性が強いと適正な位置から外れると、音が入らないわけです。なので、そこだけ気をつけてもらいたいです。口をつけて歌う人や、定位置で歌う人に特化してるので、持って暴れ回ったり、フリーになって使う人には、ちょっと使いづらいかもしれません。

それだけ指向性が強いマイクということですね。

マイクの中心からカーディオイド単一指向性なので、 そのメリットはハウリングマージンを取って、被りを少なくしていることです。デメリットとしてはそんなに自由が利かない点があります。

「ハンドヘルドマイクロホン」とありますが、手に持ってきっちり歌うのに合うということですね。

そうですね。手に持ってラップしたり、シャウト系でガッツリいったり、パワフルにいったりっていうのに向いてるマイクなので、そこを間違えると「あれ、音がここで入らない」ってこともあると思います。

ATM98を愛用してるシンガーやラッパーの方も多いですか?

使われているアーティストさんはいっぱい居て、サウンドエンジニアさんにも愛されてるマイクなので、色々な方が使って、その支持を受けての設計になってます。特に、サウンドエンジニアさんが扱いやすくて気に入ってるマイクでもありますね。

エンジニアの方からの印象的なフィードバックはありますか?

ハウリングを切ったりするので、必ずマイクはEQしないと(イコライザーをかけないと)いけないです。EQで音を下げたり削るというのは音質を削るのと一緒なんです。どんどん音が無くなっていくんですよ。そうしたらマイクの特性が生かされなくなるんですが、ATM98はそれをしなくて良いと言われたのが印象に残ってます。色んな場所でEQを変えないといけないんですけど、それをあんまりしなくて良いので愛されてると思いますね。

「過酷なモニター環境下でも圧倒的なハウリングマージンを確保」という説明は伊達ではないということですね。

はい。あと、周波数特性としては70Hzから16KHzですが、ちゃんと低域も出るんですね。16KHzはスタンダードですけど、高域が無駄に上がってないという特徴を持っています。どうしても高域は上がりがちなんですけど、それをしっかり抑えられるマイクになります。いわゆるリッチな音で、ちょっと重めでふくよかで、ミッドも良くて、という特性ですね。

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