効率性と安全性を求め、あらゆる物事のデジタル化が進む昨今。 その一方で、足りなくなってしまった「手触り」に飢えたZ世代の間でもレコードの需要が高まっており、80年代の盤が再発されたりと人気が再燃。 「アナログ」が改めて評価されている。 先日、日本橋兜町でゆるりとスタートした「針J」企画のスピンオフとして、東急プラザ銀座5Fの空間「Space Is the Place」(現在は閉店しております)にて、じっくりとアナログの音に耳を傾けてみる。 連載「Part.02」をお届け。

【Part.01はこちら】

レコードで聴くと、その人に会えたような気がする。

おふたりがはじめて買ったレコードって何なんですか?

垣畑:私は当時100円で買ったオリビア・ニュートン=ジョンのレコード。

水原:私は何だったかな。 アバとかビー・ジーズだった気がする。

垣畑:これが欲しいって思って買ったレコードは、レッド・ツェッペリンの『聖なる館(Houses of the Holy)』がはじめてだったかな。

水原:もう二度とライブに行けないアーティストの作品をレコードで聴くと、何だかその人に会えたような気がして少しだけドキドキしない?

垣畑:確かに。 その時代にワープするというか、同じ空気を吸いにライブに行くような感覚はあるかも。 ライブを観に行くと、みんな必ず「一緒の空気を吸った」って言いがちだよね(笑)。 じゃあ、次は先日亡くなってしまったファラオ・サンダースの「Love Is Everywhere」をかけてみようと思います。 追悼も兼ねて。

~「VM510CB」のカートリッジで試聴 ファラオ・サンダース「Love Is Everywhere」~

Space Is the Place

垣畑:うん。 やっぱり良いですね! なんかすごくない?

水原:すごい。 パーカッションの色んな音色が聴こえてくる。

垣畑:めっちゃ良い感じ! ぴったりだ。 相性が良いですね。

水原:ここでもう一度「VM760SLC」の針に換えてみますか?

~「VM760SLC」のカートリッジで試聴 ファラオ・サンダース「Love Is Everywhere」~

生音が秀でる、カートリッジの特性。

Space Is the Place

垣畑:ライブ感がありますね! ライブで聴いているみたいで気持ち良い。

水原:目の前で演奏しているみたい(笑)。

垣畑:空間の広がりを感じますね。

水原:おお〜。 生(なま)みが増している感じの音ですね。 生楽器とかのライブ向きなのかも。

垣畑:ピアノがめっちゃ良い!

水原:なるほど。 素晴らしいですね。

垣畑:これが家で聴けるって素晴らしいですね。 どんどん行きましょう。 次は何をかけようかな?

水原:次は、ゲイリー・バートン!

~「VM760SLC」のカートリッジで試聴 ゲイリー・バートン「Open Your Eyes, You Can Fly」~

Space Is the Place

水原:うわぁ〜、いいね! これはいい。 本当に目の前で演奏しているみたい。

垣畑:わかる! ライブに来てる感じだね。

水原:続きまして!

~「VM760SLC」のカートリッジで試聴 高橋幸宏「Volare (Nel Blu Dipinto Di Blu)」~

Space Is the Place

水原:ラテン系もいいね! ラテン語が良い(笑)。

Space Is the Place

垣畑:とても良かったですね。 じゃあ、次は私。 「VM750SH」に換えて、ライブ的な曲が良いね。 上田力とパワーステーション BOS & BOZ を持ってきたの。 これはハーフ・スピード・カッティングの盤だから、ハイ・クオリティ・サウンド。 12インチだけど45回転でプレスしていて。 でも、音が良すぎるからなのか出力はそんなに大きくなくて。

~「VM750SH」のカートリッジで試聴 上田力とパワーステーション BOS & BOZ 「Persuasion」~

Space Is the Place
Space Is the Place

水原:上質。 キレイだったね。

垣畑:DJする時に、いつも出力が小さいイメージの盤だったんですけど、いろんな楽器が聴こえるから、それゆえなのかなって思っていたんです。 でも、今日はボーカルの輪郭がはっきりしていたし、ベースラインが持ち上がってかなり骨太に聴こえました。

水原:今回のセレクトはどんな感じで考えてきたの?

Space Is the Place

垣畑:音の聴き比べということだったから、ロックからジャズから歌モノまで、幅広く色んなレコードを持ってきたんですけど。 イメージ的には、ファラオ・サンダースとかの生音を大事にした方が良いようなジャズ系の盤が個人的には一番感動しました。

水原:ここまで解像度の高い音楽が聴けるなんて、最高な体験でした。

~「VM750SH」のカートリッジで試聴 スーパーシスター「Dareios The Empire」~

垣畑:プログレも良いですね。 「VM750SH」は、ダーティーな音色にもよく合う気がします。

果てしないよりも、その果てにタッチできる感覚。

Space Is the Place

水原:めっちゃ良い。 デジタル音源って、平面的に聴こえるんですけどレンジがわからなくて。 果てが見えないというか、果てしないじゃないですか。 でも、レコードはこんなに広がりがあるのに全容がわかる、その果てにタッチできるような気がして。 まさに、そこで演奏しているような感覚でしたし、生楽器系のジャズとかフュージョンが相性抜群なんだなって思いました。 さっき電子音楽のYMOも聴き比べたけど、生音には圧倒的な響きの違いがあったというか。

Space Is the Place

垣畑:楽器それぞれの音の特性みたいなものがちゃんと聴こえましたよね。 普段、カートリッジや機材は換えることがあまりないけど、「良いものを聴いている」という感覚があるから、自分でも集中して聴けるし、良い時間の使い方だったなって思いました。 スーパーシスターは、プログレとかジャズロックっぽい感じで持ってきていて。 フォークからもう少しロックな感じの曲、日本人のラテン。 あとは、スピリチュアル・ジャズのファラオ・サンダース。 個人的にはどれも面白く聴き比べることができたなって。 佑果ちゃんが持ってきた電子音楽系も生音ほど極端に違いが出たわけではなかったけど、改めて良い音で聴くと違うんだなって思えました。

水原:もっと時間があったらずっと聴いていたかったけど、すごく楽しかったです! 「針J」っていう新たな夢もできましたし(笑)。

垣畑:なかなか家では、こんなに何種類も針を換えるなんてことがないですけど、良い環境で聴くことの大切さを改めて感じましたし、針の大切さについても気づかされました。

水原:「針J」って、そういうことだったんだなって(笑)。

Profile


水原佑果 Yuka Mizuhara(奥)

ファッションモデル/タレント/DJ

1994年、兵庫県生まれ。 2015年秋にはモデルとしてパリコレクションに出演した他、TOWA TEIとの出会いから、近年はDJ活動を積極的に行っている。

垣畑真由 Mayu Kakihata(手前)

レコード店スタッフ/編集/DJ

1995年、東京都生まれ。 中学生の頃にレコードと出会い、60〜70年代の音楽を聴き始める。 レコード店での勤務やDJ、レーベルでの仕事を通し、音楽に携わる日々を送っている。

Space Is the Place by Face Records

Space Is the Place

現在は閉店しております

Words: Jun Kuramoto(WATARIGARASU)
Photos: Hinano Kimoto

SNS SHARE