「レコードは音質がいい」「レコードの音には温かみがある」とはよく耳にしますが、いまの令和の時代において発売されたレコード、その音質はいかに?ここではクラシックからジャズ、フュージョン、ロックやJ-POPなど、ジャンルや年代を超えて日々さまざまな音楽と向き合うオーディオ評論家の小原由夫さんに、最近<音がいいにもほどがある!>と感じた一枚をご紹介いただきます。
圧倒的なパワーとサウンドが押し寄せてくる
オリジナルの発売が1992年1月22日。当然 その時はCDのみ。今回が初のアナログ盤リリースとなるBLANKEY JET CITYのセカンドアルバムが『BANG!』だ。プロデューサーには、元「一風堂」のギタリスト土屋真巳、レコーディング・エンジニアにBOØWYや加藤和彦などを手懸けた英国人のマイケル・ツィマリング(Michael Zimmerling)が起用され、ブリティッシュロック、パンクロックの香りがそこはかとなく感じられたアルバムに仕上がっている。
BLANKEY JET CITYは1990年2月に結成された3ピース・ロックバンドで、ヴォーカルとギター浅井健一、ベース照井利幸、ドラムス中村達也により、2000年に解散するまで約10年間活動してきた。民放テレビのオーディション番組『いかすバンド天国』で勝ち上がったバンドであることもよく知られるところだ。
鋭く、緊張感のある演奏は、パンクバンド出身の中村の叩き出すリズムに負うところが大きいが、ベンジー(浅井)の突き刺さるような荒削りな歌唱とギター、照井の繰り出す安定した重いビートが渾然一体となってリスナー目掛けて突進してくる。BLANKEY JET CITYの初期の音楽は、そんなパワーと破壊力が圧倒的だった。
今回の初アナログ化に当たり、発売当初話題となった全編アナログレコーディングによるマスターテープから、ハイレゾリューションにてデジタルトランスファーし、そこからのダイレクトなカッティングを実施。ラッカー盤のカッティングを担当したのは、ワーナーミュージックマスタリング所属の名手、北村勝敏。装丁と仕様は、厚紙ダブルジャケットによる180g重量盤の2枚組、生産限定盤である。
針を落とした瞬間から、攻撃的なサウンドが押し寄せてくる。シンプルな楽器編成だが、そのひとつひとつの音色が濃密で響きがパワフルなのだ。リズムの芯は塊のようで、基本的にはセンター定位だが、ロカビリー風なギターリフが左右チャンネルに振られ、音場いっぱいにタイトなカッティングリフで埋め尽くされている。
2枚組・4面は、片面当たり3曲ずつの余裕のカッティングで、外周側に音溝を寄せることでダイナミックレンジを稼いでいる印象だ。さすがは北村エンジニアの仕事である。
ハードロックやパンクロックに、情報量やステレオイメージを求めてどうすんの?という声も聞こえてきそうだが、そんな古い感覚(考え)では今日の復刻盤やリマスターレコードは到底語れない。
そんな人にこそ強く訴えたい。『BANG!』は、音がいいにもほどがある!
Words:Yoshio Obara