レコードが溜まってきたのでプレーヤーを買った。 最初はBluetoothでイヤホンから聴いていたけれど、やっぱり家族や友達とも一緒に聴きたいし、家の中くらいイヤホンを外して音楽を楽しみたい。 そうお考えの人は、意外と多いのではないでしょうか。

ここではちょっとしたシステムプランを、オーディオライターの炭山アキラさんと一緒に考えてみましょう。

簡単に組みわせるなら、アクティブスピーカーがおすすめ

最も簡単にレコードプレーヤーへスピーカーを組み合わせるなら、スピーカーはアンプ内蔵タイプ、俗にいうアクティブスピーカーを使うのがいいでしょう。 アクティブスピーカーというと、パソコンの付属品みたいな製品を想像される人がいらっしゃるかもしれませんが、現代は相当の高級スピーカーも、20cmウーファーとホーン型トゥイーターを組み合わせた録音スタジオ用大型モニター・スピーカーも、そうかと思えば手のひらに乗るくらいの大きさから驚きの高音質を奏でる小さな高級機も存在します。

しかも、その多くがデフォルトでBluetooth対応となっており、現代のBluetooth対応レコードプレーヤーと、非常に相性が良いことになっています。 ただスピーカーを購入するだけで、あなたのレコードプレーヤーが高級オーディオへ変身する。 そんなことだって決して夢物語ではありません。 テレビの両脇にアクティブスピーカーを置いて、光デジタルでテレビと接続し、Bluetoothでレコードを聴く、という使い方も多くの製品で可能ですから、オーディオビジュアル・システムへの発展も容易です。

音にこだわるなら、アンプとスピーカーそれぞれにこだわろう

もう少し本腰を入れて、ご自分の “いい音” を探求されるなら、やはりアンプとスピーカーを別個に用意するのがいいでしょうね。 アンプもスピーカーもそれぞれ大きな音の違いがあり、また相互の相性という問題も実に大きいものですから、適切な組み合わせを得ることにより、一段と自分好みの表現へ近づけていくことが可能になる、というわけです。

一昔前までは、レコードプレーヤーをつなぐなら “PHONO” と名付けられた入力端子を持つプリメインアンプ、あるいはプリアンプを必要としました。 レコードプレーヤーから出力される音楽信号は、CDプレーヤーやDAPなどと比べれば100分の1くらいの小さな電圧で、しかも高音は大きく、低音は小さな音になっていますから、それを補正してやらなければなりません。 そのためにPHONO入力の直後には「フォノイコライザー」と呼ばれる装置を組み合わせる必要があったのです。

ところが、最近の特に普及クラス・プレーヤーの多くには、あらかじめフォノイコライザーが内蔵されていますから、アンプ側で内蔵している必要はなくなってきました。 オーディオテクニカのプレーヤーでは、限定品のAT-LP2022を除いてすべての製品にフォノイコライザーが内蔵されています。

オーディオテクニカの最上級機、AT-LP7。 高音質フォノイコライザーを内蔵している。
オーディオテクニカの最上級機、AT-LP7。 高音質フォノイコライザーを内蔵している。

「カートリッジを交換したい。 次のカートリッジはMC型にしよう。 」そういうことでしたら、プレーヤー内蔵のフォノイコライザーは大半がMM専用なので、別にフォノイコライザーを用意しなければいけません。 最近の比較的導入しやすいアンプに内蔵されているフォノイコライザーも、ほぼ例外なくMMのみの対応です。

こうなったら、単体のフォノイコライザー・アンプを導入しましょう。 最初の1台に是非にと薦めたいのは、オーディオテクニカのAT-PEQ30です。 調整箇所はただMMとMCを切り替えるだけでとても扱いやすく、しかも大変しっかりした再生音を聴かせてくれる、MCビギナーにとって最適の製品といってよいでしょう。

AT-PEQ30の場合、スイッチでMMとMCを切り替えることができる。
AT-PEQ30の場合、スイッチでMMとMCを切り替えることができる。

フォノイコライザー内蔵の必要がないのであれば、アンプは手のひらサイズの俗にいうデジタルアンプでも十分ではあります。 昨今のああいうミニアンプは、ちょっとビックリするほど真っ当な音質で、結構大きなスピーカーも朗々と鳴らしてしまう製品が多くなりましたからね。

しかし、レコードプレーヤーだけでなくCDやネットワーク・オーディオのプレーヤーなども接続したい。 リモコンなんかもあった方が便利でいい。 そういうことなら、やはりしっかりしたプリメインアンプをお選びになるのがいいでしょうね。 20〜45cmくらいの横幅からいろいろ選べますし、数万~数百万円まで価格帯も幅広く、数え切れないほどの商品がそろっています。

真空管アンプの魅力

現代のアンプはトランジスターで増幅するソリッドステート式が主流ですが、もう一つ大きな勢力に真空管アンプがあります。 20世紀の初め頃、音楽信号を増幅するということを初めて可能にしたのは真空管でした。 その後、第二次世界大戦後に極めて効率の高いデバイスとしてトランジスターが発明され、オーディオの世界でも1960年代頃から徐々にトランジスター・アンプが主流となっていきます。 しかし、真空管アンプにはソリッドステートに出せない魅力があるという声も少なくなく、21世紀になってむしろ勢いを盛り返してきた印象もあります。

真空管アンプにはソリッドステートに出せない魅力がある

真空の空間中に電子を飛ばすことで働く真空管は、熱してやらないと電子が飛ばないものですから「ヒーター電源」と呼ばれるものを必要とし、おかげで得られる出力のワット数に比べて消費電力が大きく、特に夏場はお部屋が暑くなるという弱点があります。 トランジスターに比べて真空管は寿命が短く、定期的に交換してやらないといけませんしね。 もっとも、数年くらいでダメになる真空管は稀ですが。

トランジスターは、そういう真空管の弱点を補うために開発されたもので、現に電源効率は良く、熱も比較的帯びにくく、寿命もかなり長いものとなっています。 何十年も前のトランジスター・アンプで出力素子がダメになる例がありますが、素子の回路そのものではなく、基板へつながる脚が酸化して折れてしまったことが、多くの原因となっているようです。

トランジスター・アンプには、そういう大きな利点があるのに、なぜ真空管アンプが大きな勢力を保っているのでしょう。 真空管アンプといってもそれはそれはいろいろな方式と音があって、ひとくくりに語るのは少々乱暴といわざるを得ないのですが、それでもほぼ共通していえることは、まるでボーカルをエコヒイキしているのではないか、とすら思わせるほど声を朗々と表現することです。 愛するボーカリストの歌をより好ましい音で聴きたい、そうお考えの人は、一度真空管アンプをお考えになっても損はないと思います。

Words:Akira Sumiyama

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