何事もきれいに長く使うためには、日頃から大切に扱うのは大事なこと。 レコード盤面のホコリや静電気をとったり、クリーナーで針先をきれいにするなど、身につけたい小さなメンテナンス習慣について、オーディオライターの炭山アキラさんが解説します。
「レコードを楽しむ時には、習慣にしてほしい “お作法” があります。 いくつかありますから、順を追って紹介していきましょう。 」
ホコリを払いましょう
まず、レコードをプラッターの上へ載せたら、乾式クリーナーでホコリを払いましょう。 AT6012Xaが代表的な製品で、レコードをくるりと1〜2周円周状に拭いてやると、盤の上の細かな埃や糸くずなどをクリーナーのベルベット面が吸い上げてくれます。
演奏前にこれをやらないと、カートリッジの針先に埃がこびりついて音が悪くなってしまいますし、最悪音が出なくなってしまうこともありますから、必ず意識して下さいね。 また、レコードを袋へ仕舞う前にも同じことを行うと、より効果的です。
静電気を逃しましょう
レコードの素材は塩化ビニールで、これはとても静電気を帯びやすい材質です。 静電気はホコリを吸い寄せてこびりつかせる原因になりますし、あまり大きく帯電すると時にカートリッジのカンチレバーへ “落雷” し、とて大きなパチッというノイズを発することがあります。 (落雷したカンチレバーを顕微鏡で覗いてみると、小さな穴があいていることがありますからビックリしますよ。 )
そんな静電気を逃がしてやると、レコードの音が大幅に良くなってしまうことが知られるようになったのは、おそらくここ10年ほどのことではないでしょうか。 静電気対策自体は半世紀以上も前からありましたが、それは主にホコリがつきにくく、掃除をしやすくするためのものでした。 それが音楽をより積極的に良い音で楽しませる対策だったなんて、不思議なものです。
最も昔からある静電気対策は、静電気を防止する薬剤を含むスプレーです。 オーディオテクニカなら「AT6086」がそうですね。 使い方は簡単、プラッターへ乗せる前にレコードから20cmくらい離してスプレーを均等に吹き、「AT6012Xa」などの乾式クリーナーで円周状に拭き取るだけです。 よく国内盤レコードが収まっているビニール製の内袋は帯電が大きいと盤に張り付き、出し入れの際にパチパチいいながらまとわりつくものですが、このスプレーを吹いているとスルリと収まるようになりますよ。
オーディオテクニカには、専用の液剤を注入することで劇的にホコリを取る効率を高めた「湿式クリーナー」も存在します。 「AT6012a」と「AT6018a」がそれです。 AT6012aは2カ所、AT6018aは1カ所の穴から液剤を注入し、数分経つとクリーニング面のベルベットが適度な湿り気を帯び、ホコリや汚れを強力に拭き上げてくれます。 毎日のお手入れには乾式を、そして少し汚れが溜まってきたら湿式で丹念に、という習慣を身に着けることをお薦めします。
付属の液剤ボトルが空になっちゃったらどうするかというと、ちゃんと補充用のボトルAT634aが用意されています。 廉価なものでもありますから、どんどん使おうじゃないですか。
「AT6018a」には、もう一つ別の効用もあります。 2つに分かれた盤面の真ん中に導電性の素材が挟み込まれていて、ピカピカ光る取っ手の部分から人体へ静電気を逃がしてくれるのです。 この除電作用をより生かすには、円周状に拭き終わった盤を止まっているプラッターへ載せ、その上へちょんちょんと4〜8カ所くらい軽く触れてやるのが有効です。 クリーニング効果に加えて大きな音質向上が味わえる、お得なクリーナーですよ。
レコードのクリーニングには、さらに重篤な汚れを落とすためのクリーニング液とクロスによる洗浄、そして高度なクリーニング・マシンによる機械洗浄というものもありますが、これらはまた機会を改めて紹介しましょうか。
針先をきれいにしましょう
レコードがきれいになったら、カートリッジの針先もやはりきれいにしておかなければなりません。 日常的に針先へ溜まったホコリや汚れを取るには「AT617a」がお薦めです。 使い方は本当に簡単、本体の蓋を取り、容器上面の粘着剤に針先を軽く押し付けるだけです。 粘着剤が汚れてきたら水洗いして何度でも使えますから、とても長持ちするクリーナーです。
年に1〜2回はもう少し丹念に針先を磨いてあげると、レコードの音はもっと良く聴こえるようになります。 そういう時に活用したいのは「AT607a」です。 針先へダメージを与えずに汚れを落とし去る液で、基本的には蓋についている刷毛で針先を後ろから前へ拭ってやるというのが基本的な使用法ですが、私は少し変則的な使い方をしています。 薬液を刷毛で綿棒の先へ塗ってやり、その綿棒で針先を磨くのです。 綿棒の繊維で針先を引っ張ったりしたら破損の恐れもありますから、作業は慎重を極めますが、汚れの落ち方=音の良くなる具合も随分違うものですよ。
Words:Akira Sumiyama