日常的にマイクを使う機会が増えてきた。良い音で聴きたいと思うのと同じように、良い音で録りたいと思っても、いざマイクを使おうとなると、たくさんの種類があって、選ぶだけでも途方に暮れてしまう。話すのか、歌うのか、楽器を演奏するのか、使う人のシチュエーションもさまざまだ。
そこで、オーディオテクニカ「アストロスタジオ」のスタジオマネージャーが、マイクの基礎や使用方法、目的に合ったマイク選びを、簡単、簡潔に徹底解説。これでもうマイク選びには迷わない!
(第7回はこちら)
▼第8回
「ポップフィルターとは? AT-PF2 後編」
歌いやすいシチュエーションも作れる
「吹かれ」をポップフィルターが防ぐことで、何かデメリットはないのですか? 例えば、ボーカルの勢いを削いでしまうような。
デメリットはあまりないですね。「吹かれ」は「ボン」とか「バン」とかいう音ですが、そういう音を防ぎます。録音してても、そういう音が結構きついんですね。ポップノイズみたいな音が出ているようなものです。それを防ぐための道具なので、必要不可欠です。
マイクでは「吹かれ」の排除が一番、神経を使うところですか?
そうですね。破裂音「パピプペポ」「タチツテト」とかそういう「ツ」「タ」というのは、どうしてもノイズになりがちなので、そこをカバー出来るポップフィルターがないとちょっときついです。
ポップフィルターの使用もそうですが、特にボーカル録りで、スタジオマネージャーが大事にしているポイントは何ですか?
特に、歌いやすいシチュエーションを作るのが一番大事かもしれないです。ポップフィルターもそうなんですけど、出来るだけ障害にならないように歌える環境作りを重要視しています。雰囲気もそうです。どうしても一人で歌うと緊張してしまうので、緊張をほぐすためにより自然に、よりストレスのない自分が声を出して、いつも通りいけるのが、環境としては大事で、それを一番気にかけています。
ポップフィルターもガイドみたいになると言っていましたけど、それをさり気なく意識させるのですか?
あまりにサイズがデカデカしていて圧迫してるものはダメです。人にもよるとは思いますけど、中には四角いものもあったり、色んなデザインがあるんですけど、威圧感のあるものはあまり使わないですね。
ボーカル録りには必要不可欠
ポップフィルターはシンプルですけど、心理的なガイドにもなる、とても繊細な装置に思えてきました。
そうですね。ボーカルの人はマイクのどの位置で歌って良いか分からないというのが、一番あるみたいで、近づいてもダメ、離れてもダメ、そこでまず迷うんですね。いつもポジションが一緒かというと、そうでもないんです。例えば、テンポの速い曲になると、ちょっとノリながらやりたいし、バラードの曲はマイクに近づけて繊細にいきたいとか、曲によって変わるので、そこのシチュエーションの中でいうと、やはりポップフィルターを使うところに行き着くのかなと思います。マイク単体だけだと、どうしても位置で音が変わってしまうので、やっぱり的が必要になってくると思います。
マイク単体だと大きさも様々で、それだけだと、距離の基準が見えないですね。
距離感が分からないので、ここで録れてるのか、ちゃんとマイクで拾えているのか、やる方も不安ですよね。これで喋っていれば良いという、そういう目星があれば、とてもやりやすくなります。あとは、ちょっとしたことでテンションが上がって、マイクに近づいても、ポップフィルターのところでストップとなりますよね。
確かに、ポップフィルターから先はマイクに近づけませんね。
そこのガードというか、そういう役割も踏まえて、とても必要なもの、必需品になっています。ラジオだと普通はポップフィルターはないんです。それはトークに集中するからでしょうね。ポップフィルターがあると、どうしても距離を意識してしまう。ラジオは双指向性のもので、お互いの会話なので、敢えてポップフィルターは置かないのでしょう。
ラジオは、座って、距離を保って話しますしね。
ラジオもレコーディングも配信もそれぞれ、より自然に録れるシチュエーションがあります。ポップフィルターを使うっていうのは、本当にボーカルを録ることに特化しているんです。
「歌唱時のポップノイズを効果的に低減」とカタログにもある通り、「歌唱」に特化して使うのが正しい、ということですね。
はい、そうです。