日常的にマイクを使う機会が増えてきた。良い音で聴きたいと思うのと同じように、良い音で録りたいと思っても、いざマイクを使おうとなると、たくさんの種類があって、選ぶだけでも途方に暮れてしまう。話すのか、歌うのか、楽器を演奏するのか、使う人のシチュエーションもさまざまだ。
そこで、オーディオテクニカ「アストロスタジオ」のスタジオマネージャーが、マイクの基礎や使用方法、目的に合ったマイク選びを、簡単、簡潔に徹底解説。これでもうマイク選びには迷わない!
(第2回はこちら)
▼第3回
「オールマイティーに使えるAT2020USB 前編」
マイクの正面から録ろう
今回から、スタジオマネージャーがお勧めするマイクを個別に紹介していきます。まず、最初に取り上げるのが、AT2020USBです。
2006年に発売してから長く皆さんに愛されている単一指向性のコンデンサーマイクです。レギュラーシリーズの中でも、コスパが良いスタンダードです。
一定の評価を得てきた定番商品というわけですね。
定番で、本当に初心者の方、これから録音を始めたいけど、何もわからないという方は、とりあえずAT2020USB選んでおけば失敗ないでしょう、というくらいのレギュラーモデルです。
では、ある程度、どんな用途でも間違いなく使えるマイクと言ってよいんでしょうか?
そうですね。その良さっていうと、マイクの側面と後ろ、サイドとリアと言うんですけど、そこの収音を抑えてるんです。なので、ピンポイントで自分の声がちゃんと繊細に録れます。
見た目はリアからも録れるようにも見えますね。
そうなんですが、マイクにちゃんとバックって書いてあって、フロントにオーディオテクニカのマークもあるので、それが自分の正面にくるように喋ってください。そこに向けて喋らないとサイドとリアは構造的にあまり音を録れないです。正面だとコンデンサーマイクなのでピンポイントでより鮮明に録れます。
マイクの正面から、という位置はまず一番大事なポイントですね。
横や上から喋ってしまう間違いが多いんですよ。そうすると、コンデンサーマイクなので音は拾うんです。ただ、結構声が大きい人は、あえてグリル上部の方を狙って喋るという人もいます。
そういう使い方もあるんですね。
用途は人、環境それぞれ何でもありで、これが絶対にいけないという訳ではないですけど、お勧めとしては、正面でちゃんとマイクの特性が出るポジションでやってもらった方が一番、AT2020USBの素晴らしい特徴が出ます。
自宅録音、動画配信に最適
AT2020USBは、オールマイティーに何でも使えるマイクですか?
自宅録音、動画配信に最適すぎるコストパフォーマンスです。コロナもあって自宅で録音したり、動画配信をやりたいという方も増えたと思うんですけど、圧倒的に皆さんこれを選んでいて、色々な高評価をいただいています。
USBで繋げられて、いきなり使えるのも利点ですね。
そうですね。パソコンにUSBドライバーは必要ですけども、パソコンのUSBポートに繋いで、直ぐLEDが光って電源オンになります。あとイヤフォンをひけます。自分の録っている音がイヤホンから聞けるのも、すごい重宝されてる理由かと思います。それが、インターフェースが必要なマイクだと、ボリュームの設定があったり、色々なチャンネルに混ぜ込んでるので、ミックスした音を聞くとかちょっと高度な技術が要りますが、インターフェースとか分からないです、という人にはUSBマイクをお勧めしますね。あとは、USBでデジタルで直接パソコンに接続できるので、ケーブルのノイズの干渉があまりないという利点もあります。
AT2020USBを置くスタンドはどういうのが良いんですか?
置くスタンドは何でも良いんですけど、例えばパソコンを置いてヘッドホンして自由に録りたい時なら、マイクスタンドを自分が配信してる1メートルくらい離れた位置に置いて録ってもらうと良いです。
近すぎるのは駄目なんでしょうか?
近づくと声は太く録れますけど、吹かれてしまうとポップフィルターを入れる必要があるので、なるべく握り拳一個分空けた位置でやってください。スタジオでボーカル録りの時はアームスタンドがあるので、例えばマイクを逆さにして自分の位置に持ってきて、握り拳一個分のフィルターが入ったところでやってもらうとかなり良い音が録れるんですよ。近接効果っていうんですけど、低音を拾うと、その分音がモヤモヤして、歪んでしまうので、そこを回避するためにもちゃんと低域から高域までフラットに録れるように握り拳一個分くらい空けて、ポップフィルターも入れて歌は録ります。その時はアームスタンドです。どうしてもマイクスタンドだと、歌っている最中に足が当たったりとかあるんです。なるべくストレスない位置で自由に歌えるようにアームスタンドか、もしくはスタンドを長めにして上から狙うようにします。ちゃんとスタンドが見えていれば、自分が歌いやすいポジションにいられるんですね。
自宅での配信や録音でのマイク・ポジションはどうでしょう?
例えばパソコンにマイクを近づけると、パソコンの音も拾うので、なるべく自分の口元にマイクの正面が向くように置きます。AT2020USBのタイプはミニ三脚もあるので、パソコンの横に三脚で置いてもらってやるといいです。
ちゃんと自分の喋ってる方を向いていれば、パソコンの音も拾わないわけですね。
そうですね。マイクをパソコン画面にかなり近づけると確かに拾っちゃうんですけど、三脚を立てて少し離してもらってやれば、そんなにパソコンの動作音などは気にはならないです。
第4回「オールマイティーに使えるAT2020USB 後編」へ続く