日常的にマイクを使う機会が増えてきた。良い音で聴きたいと思うのと同じように、良い音で録りたいと思っても、いざマイクを使おうとなると、たくさんの種類があって、選ぶだけでも途方に暮れてしまう。話すのか、歌うのか、楽器を演奏するのか、使う人のシチュエーションもさまざまだ。
そこで、オーディオテクニカ「アストロスタジオ」のスタジオマネージャーが、マイクの基礎や使用方法、目的に合ったマイク選びを、簡単、簡潔に徹底解説。これでもうマイク選びには迷わない!

▼第1回
「マイクとは? 種類と使い方 基礎編1」

ダイナミックマイクとコンデンサーマイク

そもそもマイクとは何でしょう?

空気振動を電気信号に変換する機械として、マイクは存在します。

マイクにはどんな種類がありますか?

2種類あります。まず、ダイナミックマイク。主にカラオケとかライヴサウンドで使われる、歌うときのマイクです。特徴としては、丈夫で壊れにくく、息を吹かれたり、大音量でも歪みにくい。あとは力強い音を出せるというのもメリットです。

もう一つは、コンデンサーマイク。電源が必要で、電圧をかけないとマイクが使えません。これは主にレコーディングで使われるマイクなので、とても繊細に録れます。配信ライヴでも、より鮮明に綺麗に録りたい時に使われるマイクです。コンデンサーマイクは、周波数がフラット、平坦なほうが綺麗に自分の声が生かされます。高域や低域に癖があると、そこだけが特徴化されてしまいます。

マイクの種類

それだけコンデンサーマイクは繊細だということですね。

はい。ダイナミックマイクなら、カラオケで好きに歌いたいとか、自由にいろんな場所で歌いたいとか、どんなシチュエーションでも大丈夫です。ライヴ感を出したい時にも使うマイクです。

楽器を綺麗に録音したい場合もコンデンサーマイクになりますか?

そうですね。弾き語りとかで使う場合は絶対にコンデンサーマイクのほうが綺麗に録れます。打楽器・ドラムセットなど、破裂音のするような力強い音が出る楽器は、コンデンサーマイクは感度が高いので入力しようとすると歪んでしまいます。鮮明すぎるんですね。アタックに弱いところがあるので、そういう場合はダイナミックマイクを選んでます。

スタジオ録音では使い分けてるんですね。

トータルの一部として使い分けて、うまくバランスをとってやってます。

YouTubeなどで配信したいという人には、ダイナミックマイクをお勧めしますか?

シチュエーションによると思うんですけど、例えば、ボーカル、自分の声を届けたい場合はコンデンサーマイクが良いです。より鮮明に録れるので。配信ライヴとかそういうライヴ系をやりたいのであれば、ダイナミックマイクのほうが良いです。

歌を聴かせたいなら、コンデンサーマイクになるわけですね。

コンデンサーマイクのほうが十分に良さが届くと思います。

トークライヴのような、何人かで喋るような場合は?

ダイナミックマイクのほうが良いです。

マイクの指向性とは?

ソロで録音する、グループで録音するなど、シチュエーション別での使い分けはどうすれば良いですか?

ソロで録る場合でも、いろいろシチュエーションで分かれるので、それを選ぶ意味合いとしては指向性というのが存在します。指向性には、無指向性、双指向性、単一指向性、ハイパーカーディオイド(超指向性)があります。例えば大人数で録りたい場合は、無指向性・全指向性と言われるマイクを各箇所に立てて録ります。

指向性のイメージ

デュエットなら、普通の単一指向性で録るとか、用途に応じて、指向性とスペックを確認してセットアップしたほうが良いです。

大きく分けると無指向性と単一指向性になるんですか?

無指向性のコンデンサーマイクと、単一指向性のダイナミックマイクという二つに分けられます。コンデンサーマイクにも指向性を持ってるのもありますけど、大きくはその二つです。例えば、大勢で会議したい時には、真ん中に無指向性のバウンダリーマイク(コンデンサーマイク)を置くと周りの声を拾ってくれるので、いつ誰が喋ってもちゃんと録れる条件になります。

楽器の音を録る他に、空間の響きを録りたい場合のセッティングはどうでしょうか?

例えば、観客がいないスタジオでは、どこに響きが重点的に集まってくるか。その響きの良いところにマイクをセットアップして、空間的に共鳴させる感じです。

その際は、無指向性のマイクですか?

無指向性の時もあるし、良い響きが出るところに指向性のマイクを置いて、ちゃんとその音を狙って録るというやり方もあります。無指向性が全て良い空間を録れるわけではなく、雑音も入るのでそこも結構気にします。ここだけのエリアで録りたいとなると指向性になります。エリア分けって言うんですけど、それはちゃんと適したマイクを選んで、置き場所によってマイクも変えていきます。

観客がいるライヴ会場ではどうでしょうか?

観客の近くに感度の良いマイクを置くと、その人だけの声や拍手などを拾ってしまいます。環境音を録るのが難しい場合は、コンサートホールを見ると分かると思うんですけど、天井にマイクが吊ってあります。大相撲でもそうです。人を寄せ付けないというか、干渉しないところに良い音は溜まると思うんです。そこに無指向性だったり感度の良いマイクをセットアップして、反響を録ります。カーステレオのセットアップでアリーナモードってありますよね?ああいうイメージです。ナチュラルリバーブ感を出したいためにやります。より空気感が伝わる音源を作りたいときはそうやっています。単音だけだとどうしても音が固くなっちゃってバランスも難しいんですね。響きまで入れたほうがバランスよくスムーズになります。

第2回「マイクとは? 種類と使い方 基礎編2」へ続く

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