蚤の市やフリーマーケット、あるいは古本市の一角や海外旅行中の街角で。 レコード好きなら、レコードショップ以外でも中古のレコードが安く売られているのを見つけるとつい気になってしまうはず。 しかしレコード屋で販売されている商品と比べると、価格がお手頃になる分どうしても円盤のコンディションが悪いものもあります。

傷は流石に直せませんが、カビやひどい汚れならレコードクリーニング液やクリーニングクロスを使って手洗いで落とすことができます。 しかし今回注目するのは「機械洗い」。 音楽家であり録音エンジニアでありオーディオ評論家でもある生形三郎さん流のジャンクレコードの洗い方をご紹介いただきました。

手洗いの方法のご紹介記事はこちら:レコードをいい音で聴くためのお手入れ 〜オーディオライターのレコード講座〜

汚れであればほぼ落とせる

ジャンクレコードのすすめ、今回は筆者流ジャンクレコードの洗い方をご紹介します。 「ジャンクレコードのすすめ、買い方編 」でも書きましたが、ジャンクレコードが「ジャンク扱い」である大半の理由は、ダメージがあるからです。 その中でも、「盤面の汚れ」によるダメージであれば、ほぼ回復は可能です。

洗浄の方法は色々ありますが、基本は変わりません。 手洗い、機械洗いに大別され、手洗いは、ネット検索をすると大量にノウハウが出てくると思います。 それらは、Always Listeningでもご紹介しているように市販の洗浄液や洗浄グッズを使ってクリーニングするか、あるいは超極細の歯ブラシ等を使って、市販の洗浄液や汎用中性洗剤でレコードを洗うというものでしょう。 筆者もかつてはそのように手洗いをしていました。 しかしながら、ジャンクレコードは汚れが酷いものも多く時間や根気が必要となるため、思い切って機械洗いに切り替えました。

レコードを超音波洗浄機で洗うメリット

機械洗いにもいくつか種類があるのですが、筆者が使うのは超音波を利用して洗浄するものです。 メガネ屋さんの店頭にある超音波洗浄機のレコード洗浄バージョンといえば分かりやすいかもしれません。

超音波洗浄機の良いところは、次の点です。

  1. 基本的に洗浄液が不要で水だけで洗えること
  2. (機種にもよりますが)複数枚同時に洗浄できること
  3. 操作の工程が洗浄スタートボタンを押すだけで完了すること
  4. メンテナンスフリーなこと(←とても大事です!)
  5. 洗浄による音質の変化がないこと

です。

ネックは、本体が高価なことと、私が使っているKirmuss Audio「KA-RC-1」はレコードの乾燥機能がついていない点です。 ですが最近は、乾燥機能までがついた比較的安価な超音波洗浄機(例えば「HumminGuru超音波ビニールレコードクリーナー」など)も登場してきています。

Kirmuss Audio「KA-RC-1」

どうやって使うの?

私流の超音波洗浄機の使い方をご紹介します。 一般的に超音波洗浄機は、5〜10分の洗浄時間で使用するようになっています。 しかし、汚れの酷いものですと、15分程度の時間設定をして洗浄しても、なかなか落ちてくれません。 そこで筆者は15分ワンセットを3回ほど繰り返して洗浄します。 そうすると、大概の場合、再生ノイズが乗らなくなります。

まれに、超音波洗浄機はレコードの音溝を痛めるのでは、という話を耳にしますが、レコード洗浄用に開発されたものは、発生させる超音波の波長をレコード溝に最適化しているようです。 少なくとも筆者が使っている「KA-RC-1」はそのような仕様で、実際に洗浄後の音を聴いてみても、違和感を覚えたことはありません。 強いて言えば、洗浄直後は音がクリア過ぎて驚くのですが、それも最初のうちだけで、一ヶ月ほど経つと、ノイズが無くなった以外は、聴き慣れたサウンドに落ち着く気がしています。

水温と乾燥は気をつけて欲しいポイント

ただ、注意点もあります。 一度に長時間の洗浄を行なうと洗浄水の温度が急上昇して、そのまま温水で洗い続けると一時的にレコード盤が反ってしまうことがあります。 ですので、1回ないし2回の洗浄で水を変えるとよいでしょう。 洗浄水は精製水がベストのようですが、筆者は浄水器の水を使用しています。 なお、自身で検証したわけではありませんが、日本の場合は水道水でも問題ないとする意見も多いようです。 その場合、真夏などで水温が上がっている場合は、冷たい水が出るまで流してから使うほうが無難でしょう。

洗浄後はarteのレコードクリーニング用不織布「RC-C」で サッとひと拭きして、同じくarteのレコードドライスタンド「RC-DS」に置いて、乾くまで放置しておきます(不織布とスタンドは超音波洗浄機に付属していました。 もちろん別のものでも良いでしょう)。
注意したいのは、レコードが完全に乾くのを待ってから再生するということです。 待ちきれずに乾かぬうちにレコード針を落としてしまうと、針先を痛める可能性もありますのでご注意下さい。

arteのレコードドライスタンド「RC-DS」

機械洗浄、お試しください

超音波洗浄機は少々お値段が張りますが、汚れのついたジャンクレコードを恐れること無く買い漁ってたくさんのレコードを安価に楽しめること、そして、手洗いの手間暇が格段に軽減されることを考えると、結果的にお得だと筆者は考えています。 気になった方はぜひともチェックしてみて下さい。

なお、自分で購入するのはハードルが高いけど、少し試してみたいという方。 以前、中古オーディオショップを訪れた際、お店での商品購入特典として、お店に置いてある洗浄マシーンで手持ちのレコードを洗うことができるサービスを実施していたお店がありました。 ご近所でそういったお店を探してみると良いかもしれません。 また、ネット検索すると、有料ですが安価に洗浄してくれる通販サービスを実施しているお店もあるようですので、利用してみると良いかもしれません。

Words:Saburo Ubukata