渋谷のミヤシタパークからほど近い雑居ビルの地下。ロックバー『Grandfather’s (グランドファーザーズ)』は1971年にオープンした。
初代店主であり創業者の松井幹彦氏から店を引き継いだ、二代目オーナーの石川徹さん。およそ半世紀前にアルバイトとして働きはじめ、そして今もなおその当時のままの営業を続け、ロックスピリッツを引き継いでいる。
店内でかける音楽は開店当時から全てレコードでかけており、一枚から一曲のみをかけるスタイル。しかしDJという言葉は使われておらず ”レコード係”と呼ばれている。
ターンテーブルはDenon DP-59M、パワーアンプにQuad 405、ミキサーにAllen&HeathのX One43C スピーカーがJBL-4311というセットアップ。70〜80年代のロックの定番・名盤や、歴代のビルボードチャートにランクインしたAORやPOPSなど、親しみやすいメロディーで大衆受けするレコードを中心に選曲している一方で、お客様からのリクエストも受け付けているそう。
薄暗い店内はまるでアメリカの大衆酒場のような、木を基調としたクラシカルな面持ち。馬の蹄のオブジェやランプシェード、外国を感じさせるインテリアが並ぶ。店内は喫煙可能。取り扱いはバーボンがメインだが、海外の客からも評価の高いジャパニーズウイスキーなども揃っている。ドリンクの他に、出汁から手作りで作っているおでんやロールキャベツ、あたりめがおすすめとのこと。
以前はおよそ50代のお客さんが多かったが、コロナ禍で多くの人の働き方が変わったこと、そしてSNSの影響により、近年では徐々に若い客層も増えてきた。また、一曲ずつ別のレコードから選曲する”音楽係”スタイルは、配信サービスなどで好きな音楽だけを手軽にダウンロードできるようになった現代の音楽の聴き方に似ていることから、時代にマッチしているのではないかと石川さんは言う。
店名の『Grandfather’s』はおじいさんの店、おじいさんがやっていた店という意味あいが込められている。”昔ながらの曲をかける店”という思いを込めて先代の松井氏が命名した。「音楽というものは聞くものではなく楽しむもの、音楽というものは親から子供に引き継がれていくもの。」石川さんはこの店をできるだけ長く、この先十年二十年と同じ場所で続けていきたいと話す。人生を通してお気に入りの一曲と出会えそうなお店だ。
Grandfather’s
〒150-0002
東京都渋谷区渋谷1-24-7 渋谷フラットビルB1
Photos & Words by Masahiro Takai