Always Listeningがお届けする「ミュージシャンがサウンドトラックを手掛けた作品特集」第2弾は洋楽編。
クラークやトム・ヨークのように初めてサウンドトラックに挑戦したアーティストから、ランディ・ニューマンのようなベテランまで、ミュージシャンとの繋がりが深い作品をピックアップ! ラインナップには、デヴィッド・フィンチャー監督とトレント・レズナー&アッティカ・ロス、ポール・トーマス・アンダーソン監督とジョニー・グリーンウッドのように何度もコラボレートしている組み合わせも。音楽を担当するアーティストから映画をセレクトして鑑賞するのもおすすめだ。

第1弾|邦楽編はこちらから

1.『ダニエル』

孤独な少年ルークには、自分にしか見えない空想の友達、ダニエルがいた。ある事件をきっかけにダニエルを封印するが、やがて成長したルークは同じように成長したダニエルに再会。そして、危うい魅力を放つダニエルは、ルークを破滅へと導いていく。ダニエルは妄想なのか、実在するのか。正気と狂気の境界で揺れ動くサイコ・スリラー『ダニエル』のサントラを手掛けたのは、イギリスのテクノ・シーンで異彩を放つ鬼才、クラーク。電子音にピアノやストリングスなど生音を織り交ぜて緊張感に満ちたサウンドを作り上げ、ルークの揺れ動く内面を表現している。

トム・ヨーク、クラーク、El-Pなど、ミュージシャンが音楽を手掛けた映画8選/洋楽編

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『ダニエル』

トム・ヨーク、クラーク、El-Pなど、ミュージシャンが音楽を手掛けた映画8選/洋楽編
2021年2月5日(金)より新宿武蔵野館、渋谷ホワイトシネクイント、グランドシネマサンシャイン(池袋)ほかにて、絶賛公開中!
監督・脚本:アダム・エジプト・モーティマー
製作:イライジャ・ウッド
出演:マイルズ・ロビンス、パトリック・シュワルツェネッガー ほか
音楽:クラーク
配給:フラッグ
2018年製作/99分/R15+/アメリカ 原題:Daniel Isn’t Real
©2019 DANIEL FILM INC. ALL RIGHTS RESERVED. 【R15+】

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2. 『カポネ』

アメリカの暗黒街に君臨した伝説的なギャング、アル・カポネ。その血まみれの人生は、『暗黒街の顔役』(1932年)、『アンタッチャブル』(1987年)など度々映画化されていたが、あまり知られることがない晩年のエピソードに着想したのが本作だ。家族に囲まれて豪邸で隠遁生活を送るカポネは認知症を患って、正気を失いつつあった。カポネの遺産を巡って部下やFBIが暗躍するなか、カポネの狂気が暴走する。サントラを手掛けたのはヒップホップのトラックメイカーで、現在はラン・ザ・ジュエルズもメンバーとして活動するEl-P。本作ではビートを使わず、重苦しくアンビエントなサウンドで、カポネの心の闇を浮かび上がらせる。

トム・ヨーク、クラーク、El-Pなど、ミュージシャンが音楽を手掛けた映画8選/洋楽編

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『カポネ』

トム・ヨーク、クラーク、El-Pなど、ミュージシャンが音楽を手掛けた映画8選/洋楽編
2021/2/26(金)より、新宿シネマカリテ、ヒューマントラストシネマ渋谷ほかにて全国ロードショー
監督・脚本:ジョシュ・トランク『クロニクル』『ファンタスティック・フォー』
出演:トム・ハーディ『マッドマックス 怒りのデス・ロード』、マット・ディロン『ハウス・ジャック・ビルト』、カイル・マクラクラン『ツイン・ピークス』
音楽:El-P
2020年/アメリカ・カナダ/英語/カラー/104分/シネスコ/ドルビーデジタル/原題:Capone
提供:ニューセレクト
配給:アルバトロス・フィルム
©2020 FONZO, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.
公式サイト

3. 『マンク』

映画史に残る名作『市民ケーン』(1941年)の脚本を手掛けたマンクことハーマン・J・マンキウィッツ。彼はどんな風に脚本に取り組んだのか。その制作過程を『ソーシャル・ネットワーク』(2010年)のデヴィッド・フィンチャー監督が映画化。『市民ケーン』の監督、オーソン・ウェルズや映画の題材になった大富豪、ダミアン・ハーストとマンクの確執を通じて、ハリウッドの光と闇が浮かび上がる。サントラを手掛けたのはフィンチャー作品の常連、トレント・レズナーとアッティカス・ロスのコンビ。バーナード・ハーマンによる『市民ケーン』のサントラにオマージュを捧げるように、彼らにしては珍しく生バンドを使ったジャジーなサウンド。そして、40年代に使われていた楽器だけで演奏するというこだわりで、時代の空気を醸し出している。

トム・ヨーク、クラーク、El-Pなど、ミュージシャンが音楽を手掛けた映画8選/洋楽編

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Netflix 映画『Mank/マンク』

トム・ヨーク、クラーク、El-Pなど、ミュージシャンが音楽を手掛けた映画8選/洋楽編
Netflix映画『Mank/マンク』独占配信中
監督:デビッド・フィンチャー
製作:セアン・チャフィン、エリック・ロス、ダグラス・アーバンスキー
脚本:ジャック・フィンチャー
出演:ゲイリー・オールドマン、アマンダ・セイフライド、リリー・コリンズ ほか
音楽:トレント・レズナー、アッティカス・ロス
2020年製作/132分/G/アメリカ原題:Mank
Netflixで配信中

4. 『ファントム・スレッド』

天才的な腕前を持つ仕立て屋、レイノルズは、立ち寄ったレストランでウェイトレスのアルマと恋に落ちる。2人は一緒に暮らし始めるが、レイノルズには隠された一面があった。『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』(07年)のポール・トーマス・アンダーソン監督が、名優ダニエル・デイ・ルイスを主役に迎えて、愛と疑惑の間で揺れ動く男女をサスペンスフルに描いた。サントラを担当したのはレディオヘッドのギタリスト、ジョニー・グリーンウッド。彼はアンダーソン作品で度々サントラを手掛けてきたが、これまでの現代音楽的な作風から趣を変えて、ストリングスの音色とメロディーを際立たせている。その官能的なサウンドが、物語に白昼夢のようなムードを生み出した。

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『ファントム・スレッド』

トム・ヨーク、クラーク、El-Pなど、ミュージシャンが音楽を手掛けた映画8選/洋楽編
監督・脚本:ポール・トーマス・アンダーソン
出演:ダニエル・デイ・ルイス、ビッキー・クリープス、レスリー・マンビル ほか
音楽:ジョニー・グリーンウッド
© 2017 Phantom Thread, LLC All Rights Reserved
Blu-ray: 1,886 円+税/DVD: 1,429 円+税
発売元: NBCユニバーサル・エンターテイメント
*2021年2月25日の情報です。
詳細はこちら

5. 『サスペリア』

77年のベルリン。コンテンポラリー・ダンスの舞踊団に1人の少女が入団するが、そこでは悪魔崇拝の儀式が行われていた。ダリオ・アルジェント監督によるホラー映画の名作『サスペリア』(77年)を、『君の名前で僕を呼んで』(17年)のルカ・グァダニーノ監督が斬新な切り口でリメイク。オリジナルのサントラはイタリアのプログレ・バンド、ゴブリンが担当したが、今回はレディオヘッドのトム・ヨークが担当。トムにとってはサントラは初挑戦だったが、持ち前のアヴァンギャルドな実験精神を発揮して、ノイズや不協和音の中に美しいメロディーを織り込み、恐怖や狂気の中に隠された悲しみも表現した。

トム・ヨーク、クラーク、El-Pなど、ミュージシャンが音楽を手掛けた映画8選/洋楽編

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『サスペリア』


監督:ルカ・グァダニーノ『君の名前で僕を呼んで』
出演:ダコタ・ジョンソン、ティルダ・スウィントン、ミア・ゴス、ルッツ・エバースドルフ、ジェシカ・ハーパー、クロエ・グレース・モレッツ
音楽:トム・ヨーク(レディオヘッド)
©Courtesy of Amazon Studios
Blu-ray:2,000円+税/DVD:1,143円+税
発売・販売元: ギャガ
©2018 AMAZON CONTENT SERVICES LLC All Rights Reserved

6. 『レディ・バード』

カトリック系の高校に通うクリスティンの夢は、開放的な都会の大学に進学して青春を満喫すること。でも、母親は地元の大学に行かせようとするし、高校生活はうまくいかないことばかり。そんなある日、バンドをやっているかっこいい男子といい雰囲気になる。女優のグレタ・ガーウィックが監督に初挑戦。等身大の青春を描いた本作でサントラを担当したのは、シンガー・ソングライターでプロデューサーとしても活動するジョン・ブライオン。フィオナ・アップルやエイミー・マンなど、様々なアーティストの作品に関わってきた彼の音楽性が活かされたポップで親しみやすいサウンドが、物語を身近なものに感じさせてくれる。

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『レディ・バード』

トム・ヨーク、クラーク、El-Pなど、ミュージシャンが音楽を手掛けた映画8選/洋楽編
監督:グレタ・ガーウィッグ
出演:シアーシャ・ローナン、ローリー・メトカーフ、トレイシー・レッツ ほか
音楽:ジョン・ブライオン
2017年製作/94分/PG12/アメリカ 原題:Lady Bird 配給:東宝東和
Blu-ray: 1,886 円+税/DVD: 1,429 円+税
発売元:NBCユニバーサル・エンターテイメント
*2021年2月25日の情報です。
詳細はこちら

7. 『グッド・タイム』

NYで荒れた生活を送っているコニーは、知的障害がある弟のニックのことをいつも気にかけていた。ニックに自信を持たせるために2人で銀行強盗を計画するが、あえなく失敗。捕まったニックを助けるために、コニーは街中を駆け回る。デビュー作『神様なんてくそくらえ』(14年)で注目を集めたサフディ兄弟が監督を手掛けた、社会の底辺でさまよう若者たちの人間ドラマ。サントラを担当したのは、エレクトロ・シーンの新鋭、ワンオートリックス・ポイント・ネヴァー。80年代風の荒々しいシンセ・サウンドから、物語に渦巻く焦燥感や絶望が伝わってくる。本作でカンヌ国際映画祭でサウンドトラック賞を受賞して、ワンオートリックス・ポイント・ネヴァーは映画界でも注目を集めることに。

トム・ヨーク、クラーク、El-Pなど、ミュージシャンが音楽を手掛けた映画8選/洋楽編

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『グッド・タイム』

トム・ヨーク、クラーク、El-Pなど、ミュージシャンが音楽を手掛けた映画8選/洋楽編
監督:ジョシュ&ベニー・サフディ『神様なんかくそくらえ』
脚本:ロナルド・ブロンスタイン&ジョシュ・サフディ  
出演:ロバート・パティンソン『トワイライト』、ベニー・サフディ(監督兼任)、ジェニファー・ジェイソン・リー『ヘイトフル・エイト』 バーカッド・アブディ『キャプテン・フィリップス』
音楽:ワンオートリックス・ポイント・ネヴァー
2017/アメリカ/カラー/英語/100分 原題:GOOD TIME 配給:ファインフィルムズ   
© 2017 Hercules Film Investments, SARL R15+
Netflixで配信中

8. 『マリッジ・ストーリー』

劇団を主催する演出家のチャーリーと女優のニコールの夫婦は、息子とNYで暮らしている。2人は相手を大切に思いながらも、いつしか気持ちはすれ違ってしまい離婚を決意。円満に別れるはずが、弁護士を雇ったことで2人の関係はこじれていく。アダム・ドライバーとスカーレット・ヨハンソンを主役に迎えて、ノア・バームバック監督がウディ・アレンのような軽妙さと洞察力で夫婦の機微を描き出す。サントラを手掛けたのは、シンガー・ソングライターとしても、映画音楽作曲家としてもベテランのランディ・ニューマン。普段はオーケストラ・サウンドが多いなか、本作ではストリングス・カルテットを起用。バームバックが初めて聴いた時に泣いたという、ほろ苦いメロディーが胸にしみる。

トム・ヨーク、クラーク、El-Pなど、ミュージシャンが音楽を手掛けた映画8選/洋楽編

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Netflix映画『マリッジ・ストーリー』

トム・ヨーク、クラーク、El-Pなど、ミュージシャンが音楽を手掛けた映画8選/洋楽編
Netflix映画『マリッジ・ストーリー』独占配信中
監督・脚本:ノア・バームバック
出演:スカーレット・ヨハンソン、アダム・ドライバー、ローラ・ダーン ほか
音楽:ランディ・ニューマン
2019年製作/136分/G/アメリカ 原題:Marriage Story 配給:Netflix
Netflixで配信中

Words:村尾泰郎

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