フィールドレコーディングの魅力を存分に体験するため、また、音楽制作や映像制作にも使用可能なクオリティを得るには、専用のレコーダーやマイクを使って録音する必要があります。 そこで今回は、よりよい音でフィールドレコーディングを行なうために欠かすことが出来ない、レコーダー、マイク、ヘッドホンという3つの機材の役割と、それぞれ用途に沿ったオススメ製品を音楽家、録音エンジニア、オーディオ評論家の生形三郎さんにご紹介いただきました。

音を記録するためのレコーダー

レコーダーは音を記録する機器です。 ICレコーダーのように内蔵のマイクのみで録音することを念頭に置いたシンプルなものから、マイクを内蔵しつつも別途マイクを繋げることができるタイプや、はじめから外部のマイクを繋げて録音することを想定したタイプが存在します。

マイク内蔵レコーダー

手軽に高音質で録音できることが魅力のタイプです。 小型で、なおかつ本体だけですぐに録音が出来るため機動性に優れます。 よって、フィールドレコーディングをこれから始めてみたい人、コストを抑えたい人、録りたい瞬間にすぐ録音しなければならないなど機動性を重視する場合に適しています。 内蔵するマイクの種類は、たとえばZOOMのH1 essentialのような「単一指向性」と呼ばれるタイプのマイクを内蔵したモデルがオススメです。

外部マイクも接続できるマイク内蔵レコーダー

フィールドレコーディング素材を高音質で収録して音楽制作や映像制作に用いたい場合は、「外部マイクを接続できるマイク内蔵タイプ」のレコーダーが良いでしょう。 このレコーダーは、内蔵マイクのほか「XLR端子」と呼ばれるマイク入力端子を備えているため、本格的なマイクを接続してよりハイクオリティな収録も可能です。 例としては、TASCAMのPortacapture X6やZOOMのH4 essentialなどが挙げられます。

画像は2016年発売のZoom H4n Pro。 現在は生産完了し、最新モデルはH4 essentialとなっている。
画像は2016年発売のZoom H4n Pro。 現在は生産完了し、最新モデルはH4 essentialとなっている。

外部マイク接続専用のフィールドレコーダー

レコーダーの最上位に位置するのが、フィールドレコーダーと呼ばれるタイプです。 これは、プロフェッショナルな現場で使われるもので、映画撮影やTV撮影のロケで音声さんが用いているタイプです。 外部マイクを接続して録音することのみが想定されたもので、複数チャンネルでの同時録音機能も有しています。 録音音質を決定づけるマイクプリアンプやADコンバーターと呼ばれる部分にも十分な配慮がなされている場合が多く、スタジオクオリティでの録音が可能です。 業界標準として、SOUND DEVICES社の製品が有名です。

筆者が所有するのはTASCAMのDR-680 MK II
同じく筆者が所有するNAGRA 4.2。 アナログ時代は世界標準だったモノラルテープレコーダー。 単一乾電池12本で駆動するが、電池を含めた総重量はなんと6kgほど…!
(上)筆者が所有するのはTASCAMのDR-680 MK II(下)同じく筆者が所有するNAGRA 4.2。 アナログ時代は世界標準だったモノラルテープレコーダー。 単一乾電池12本で駆動するが、電池を含めた総重量はなんと6kgほど…!

音を拾うためのマイク

マイクはご存知のように音を拾う機材ですが、フィールドレコーディングでは、おもに「指向性」と呼ばれる、マイクがどの方向に対して音をよく拾うか、といった特長によって使い分けられます。 ここからは、代表的な例とその特徴をもつオーディオテクニカの製品をいくつか簡単にご紹介します。

ステレオマイク(単一指向性マイクが2つ内蔵されたXY方式のマイク)

レコーダー内蔵に採用されることも多い、単一指向性タイプのマイクがXY配置されたステレオマイクは、手軽なセッティングで高音質なステレオ録音が可能です。 XY配置は、同軸方式とも呼ばれるもので、左右チャンネル用のマイクが、角度をつけて同じ軸上に置かれています。 そのため、左右マイク間の時間差がないため、曖昧さのない、優れた音源位置の描写が可能です。

ショットガンマイク(超指向性マイク)

様々な音が混在するフィールド内で、目的の音だけを録りたい場合に使用するマイクです。 例えば野鳥の鳴き声だけをクローズアップして録りたい場合、単一指向性のマイクでは、集音範囲が広すぎて周囲の音が邪魔になり鳥の鳴き声が埋もれ気味になってしまう場合があります。 カメラでいうところの、望遠レンズのような働きをしてくれるマイクなのです。 野鳥は木の上にいるため物理的に近づけない場合も多く、仮に近づける場合でも近づきすぎると逃げてしまうなどの制約があります。 そういった状況でも活躍してくれるマイクです。 映像のロケで人物のセリフを追うときにも使われますが、フィールドレコーディングでは1本で使うほか、2本使ったステレオでの使用も効果的です。

任意の種類のマイクを用いた組み合わせでの録音

セッティングや運用は複雑になりますが、目的に沿ったマイクを自身でアレンジして用いることで、理想的なサウンドを追求することが出来ます。 例えば、任意の指向性で揃えたペアのマイクを距離を離したり角度を付けて設置したり、それらを複数本用いてサラウンドで録音したりします。 また、サラウンドマイクと呼ばれる、複数のマイクが予め内蔵されたマイクや、ヘッドホンやイヤホンで立体的な再生が行えるバイノーラルマイクも存在します。

収録した音をチェックするためにヘッドホンを活用しよう

ヘッドホンやイヤホンは、録音時にマイクが拾っている音を確認したり、録音後に内容を確認するためのもの、つまり音をモニタリングするためのもので、必須の機材になります。 音を拾ったり記録したりする機材ではありませんが、実は、このモニターの良し悪しで、理想の録音が出来るかが決まってくるほど重要なものです。

フィールドに限らず録音に使用するヘッドホンは密閉型を使います。 密閉型はその名の通り密閉された構造となっているため、高い遮音性が確保されたヘッドホンです。 その遮音性によって、マイクが拾った音だけを確認することができるのです。 実際にフィールドレコーディングをしてみると分かりますが、録音している人の耳には、その場で実際に鳴っている音とヘッドホンから聴こえる音とが、両方混じり合って耳に届きます。 特に、音量の大きな音を録音する場合に、音の混じり合いが顕著になってきます。 理想的には、ヘッドホンから聴こえる音だけが耳に入る状態の方が、録音しようとする音を正確に把握することが出来ます。 よって、ヘッドホンの遮音性が重要になってくるのです。

忠実な再現性を追求したモニターヘッドホンがおすすめ

さらに、録音に使うヘッドホンは、なるべく音色のキャラクターが無い方が、録音する音の実態を正確に把握することが出来ます。 よって、モニターヘッドホンと呼ばれる、忠実な再現性を追求したヘッドホンを使うことをオススメします。

ヘッドホンの代わりにイヤホンも使用可能ですが、低い音も確認しやすく、掛けたり外したりもし易いヘッドホンの使用がよいでしょう。 別の記事でも詳しくお話しますが、録音は、まずは実際に鳴っている音を耳でよく聴くことが重要になります。 その意味でも、着脱が容易なヘッドホンがオススメなのです。 さらに、可搬性も考慮して折りたたみ可能なモデルが良いでしょう。 オーディオテクニカの製品では、モニターヘッドホン「Mシリーズ」がフィールドレコーディングにぴったりです。 筆者は「ATH-M70x」を試したことがありますが、その情報量の多さや精緻な音再現に驚きました。

ATH-M70x

ATH-M70x
ATH-Mシリーズは、プロからも高い評価を得ているロングランシリーズ。 エントリーの 「ATH-M20x」からフラグシップの「ATH-M70x」まで、予算や求める精度に応じて選べる、きめ細かいラインナップが特徴。

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以上、フィールドレコーディングに必須となる3つの機材をご紹介しました。 実際の録音には、他にもあったほうが綺麗に音が収録できるアイテムやセッティングのコツが無数に存在します。 それは次の記事でご紹介しますのでお楽しみに。

Words:Saburo Ubukata

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