いつも通りレコードを再生しているのに、なんだかいつもの音じゃない。 カートリッジを換えたら、なんだか音がちょっと違う気がする。 そんな経験はありませんか?後者の場合は製品の特性によるものかもしれませんが、もしかするとセッティングを見直せば解決するかもしれません。 今回は音に違和感を感じたらチェックして欲しいポイントについて、音楽家、録音エンジニア、オーディオ評論家の生形三郎さんに解説していただきました。
なんだか音が変に感じる…?
レコードは、温かみがある音、柔らかい音といったイメージが一般的で、実際そのような音で再生される場合が多いと言えます。
しかしながら、様々なレコードを再生してみると、音が歪んでしまったり、割れてしまったり、もしくは歪んだような音になり心地よくない音になってしまう、といったことも少なくありません。 みなさんも、こういった現象に出会ったことはありませんか? 筆者もレコード再生をはじめた際、このようなことが起き、悩んでいた日々がありました。
ポップスやロックなどのレコードでは気にならなかったが、演奏の音量幅の大きな盤、例えばクラシックのソロ・ピアノ曲や、ジャズのソロ・ピアノやソロ・ヴィブラフォンなど、突発的な強い音が含まれている盤を再生すると、顕著に現れることがあります。
そんな違和感を感じたら
はじめは、このレコードはこういう録音なのかな?と思ったりもしましたが、別の環境で聴いてみると全く問題にならなかったりします。 原因を探っていくと、どうやらこのような症状は、実は初歩的なものであることが判明しました。
それはセッティングです。
おもにカートリッジ周りのセッティングで、
- カートリッジを正面から見たときに、針先が盤面に対して垂直に当たっていない
→アジマス(ラテラル)角度が適切でない - カートリッジを真横から見たときに、トーンアームが盤面に対して水平になっていない
→トーンアームの高さが適切でない - カートリッジに適正な針圧がかかっていない
- オーバーハングの距離が正しくない
- プレーヤー本体が水平に設置されていない
- カートリッジの針先に汚れが付いている
といった、実にシンプルな要素が原因でした。 これらはAlways Listeningの別の記事でも解説されている、ごくごく基本的なことです。 ですが、特に、カートリッジを取り付けるときに、ネジの取り付け位置が不適切で水平や垂直、オーバーハングがズレてしまった、気づかぬうちにアームの針圧設定がズレてしまっていた、などは発生しやすいミスといえるのではないでしょうか。 また、上級者向けのプレーヤーになってくると、様々な部位のセッティングが自由に行なえる分、こういったトラブルが発生しがちと言えます。
ほんの少しのことで音が変わってしまうのがアナログの大変なところでもあります。 しかしながら、逆にそれがあるからこそ、上手く再生できたときの喜びが大きいとも言えます。
きちんと作法を守って丁寧に取り組む。 筆者は、デジタル生活に慣れきって、ついついリアルな物の扱いの丁寧さを欠いてしまいことも多いのですが、アナログ再生に取り組むことで、改めて、物を丁寧に、作法を守って扱うことの大切さにいつも気づかせてもらっています。
Words:Saburo Ubukata