オーディオテクニカは社名に “オーディオ” と入っているので、オーディオ・音響に纏わる何かをしている会社なんだろうなというのは想像できます。 しかし実は、音響機器の生産ノウハウを活かして、全く別の分野でも“モノづくり” をしているんです。 今回は静電気とホコリを綺麗に取り去るハンドクリーナーと、回転すしなどで使用されているすしロボットについてご紹介します。

レコードクリーニングをヒントに生まれた!産業用のクリーニング用品

『ハンドクリーナー』は樹脂版、ガラス、各種フィルム・シート、金属板等に付着したホコリ、材料力スなどと静電気を効率良く除去することを目的としたクリーナーです。 レコード盤に付着したゴミをとるのに必要な除塵・除電技術をヒントにして開発されました。

ハンドクリーナー HC-730/450
ハンドクリーナー HC-730/450

そしてクリーニングする材料に合わせてコンベアを備えたものが、『テクニクリーン』です。 ハンドクリーナーと同じく、微細なゴミを除去することができる産業用のクリーニングマシーン。 ガラスや金属板など、コンベアに表面を綺麗にしたいものをのせて稼働させると、マシンに備えられたクリーニングローラーがその両面に付着している静電気やゴミのほとんどを取り去ってくれます。

テクニクリーン TC-SUX30DC
テクニクリーン TC-SUX30DC

当初は印刷用紙や各種シート素材、プリント基板のホコリと静電気の除去が主な用途でしたが、そこから時代は変わり、テクノロジーの進化により精密な機械や素材が増えていきクリーナーのニーズも変化していきました。 私たちの身近なところだと、例えばスマートフォンなどの端末に欠かせないタッチパネルの製造過程で使われています。

ローラーのバリエーション
ローラーのバリエーション

クリーニングをするローラーはゴム素材でできていますが、シリコン系やフッ素系などその種類は多岐にわたります。 それぞれ、ローラーゴムの硬さや粘着度等が違うのです。 さらに、ハンドクリーナーの場合は幅や形状を、テクニクリーンの場合はローラーの組み合わせを変えることによって、金属から紙まであらゆる材料に対応することができます。

ベトナム・ホーチミンの工場でテクニクリーンが実際に使われている様子

創業から培ってきたノウハウを応用!すしロボット

はじまりは1984年、ひとりの社員のアイデアから生まれました。

当時すでにカートリッジを世界に発信していたのですが、時代は流れ、80年代になってCDが登場してからは徐々にオーディオデジタルの波が少しずつ近づいてきます。 そこで、当時の社長が社員へ伝えていた「独創的なアイデア、オリジナルの技術を目指そう」というモットーのもとに、時代にあわせた新事業のアイデアを社員から募集しました。 そしてその集まったアイデアから実際に誕生したのがこの「シャリ玉成形機」です。

AUTEC 家庭用すしメーカー にぎりっこ『ASM50』
AUTEC 家庭用すしメーカー にぎりっこ『ASM50』

家庭用すしメーカー「にぎりっこ」。 開発をスタートしてから4年後に生まれ、シンプルな機構は後に特許を取得するシャリ玉成形機のオリジナルアイデアの原型となりました。

そして翌年、業務用のすしメーカーを完成させます。 業務用のシャリ玉成形機は他社の製品が100cm四方を超える大型機だったのに比べ、奥行き約50cm、高さ約64cmとマシンの大きさは約半分に。 コストも3分の1に抑えることに成功したそうです。

ASM430 業務用のシャリ玉成形機
ASM430 業務用のシャリ玉成形機

事業の新規立ち上げからおよそ5年で業務用のマシンを開発して販売するのって、なかなかのスピード感だと思いませんか?その秘密は、ステレオカートリッジメーカーとして世界へ進出していたオーディオテクニカがカートリッジの生産設備、つまり「工場を自社で作っていたこと」でした。

何かを生産するためにはどういった設備を揃えて、どういった仕組みをつくればより効率化できるのか。 これまでに蓄積してきた設備構築のノウハウを応用して、すしメーカー生産にマッチした工場やその設備を素早く新設することができたのです。

すしメーカー以外にも、シャリメーカー、おにぎりメーカー、のりまきメーカー、のりまきカッターなどなど。 「にぎり」に関連した機器はAUTECからたくさん開発・発売されていて、特許も取得しています。 家庭用から業務用へと製品を増やし、Made in Japanの高品質な製品として、今では世界約50カ国以上に展開しています。

のりまきロボット ASM865
のりまきロボット ASM865
おむサンド

オーディオテクニカのもうひとつの顔、となったすしメーカーは日本の食文化を世界へ発信するべく今日もすしやおむすびを握り続けています。 もしかすると、あなたが食べているものもAUTEC製かも?

Words:SUKIKO.E
Edit:May Mochizuki