レコードやアナログって、流行ってるけど実際どうなの? 「円盤好子のアナログジャーニー」では、レコードやオーディオの魅力をビギナー目線でお伝えしていきます。
第22回のテーマは、よく見かけるあの「レコードを聴くあの犬、”ニッパー” について」についてです。 レコードショップの昭和レトロなポスターや陶器の置き物で、白い犬が蓄音機に耳を傾けている姿を目にしたことはありませんか?そこにはどんなストーリーがあるのか、円盤好子と学びましょう!
こんにちは、円盤好子です。 レコードショップやイベントなど音楽に関連する場所で出会う、あの白い犬。 前々からその存在は知っていたのですが、何者なのかは知らずにいました。 ある時はCDの背表紙に、またある時はレコードショップのグッズ売り場に。 よく見るといつも蓄音機のそばにいます。
音楽好きなら誰もが一度は出会ったことがあるであろうあの犬についての謎をオーディオのプロ、さぶろう先生に解決してもらいます!
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円盤:蓄音機に耳を傾ける犬の置物、よく見かけますよね。 置き物だったり、ぬいぐるみだったり。 あのカワイイ犬は一体なにものなんですか?
さぶろう先生:オーディオやレコードのあるところで高確率に見かけますよね(笑)。 身近なところでは、かのオーディオブランド「ビクター」のロゴマークにも使われています。 この犬、実は「ニッパー」という名前なんです。 ニッパーと蓄音機のロゴは、「His Master’s Voice」として知られています。 実は、亡き飼い主の声を聴いているんですね。
さぶろう先生:「His Master’s Voice」は、1890年代後半に描かれた絵がもとになっていて、もともとは蓄音機ではなく、かのエジソンが発明したシリンダー型の蓄音機が描かれていたそうです。 この絵は、この絵を描いたフランシス・バラウドの兄、マーク・H・バラウドが飼っていたフォックス・テリアで、兄が亡くなった時に弟のフランシスが犬とともに引き取ったものであるらしいです。 その後、シリンダー蓄音機に記録された兄の声を聴く犬をモチーフに、フランシスが絵を描いたというわけです。
円盤:あのカワイイ犬にはそんな逸話があったのですね。
さぶろう先生:その後、この絵を見て感動した円盤式蓄音器の発明者エミール・ベルリナーは、1900年にこの絵を商標として登録。 後にRCAビクターとして知られるビクタートーキングマシン社の商標及びロゴとなり、世界中の人々に届くことになるんですね。
円盤:オーディオテクニカにも古い蓄音機がたくさんあるのですが、蓄音機の音って意外に生々しい音ですよね。
さぶろう先生:きっとニッパーも、そんな蓄音機から聴こえたリアルな亡き飼い主の声に興味深く耳を傾けていたに違いないです。 そして、原理的には蓄音機とさほど変わらないレコードという存在が、いま再び人々の心を深く捉えていることを考えるととても感慨深いですし、音楽の「再生」の本質は、まさにそこにあるのだろうと思いますね。
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“ニッパー” という名前、そしてこの絵にまつわる素敵な思い出と企業のロゴマークになるまでの歴史を初めて知ることができました。 切ない話ですが、声(音)を届けるひとりとしてこのストーリーは胸に留めておきたいと思いました。 レコードを聴くあの犬、ニッパーの謎は解決です!
では!
Supervision:Saburo Ubukata
Words:SUKIKO.E
Illustrator:Tatsuya Hirayama
Direction:May Mochizuki