レコード再生をさらに豊かにする、オーディオ用アクセサリー。前編ではオーディオライターの炭山アキラさんに「スタビライザー」と「ターンテーブルシート」を紹介いただきました。後編となる今回は、「シェルリード線」「ヘッドシェル」「フォノケーブル」「アース線」について、選び方のポイントや音質に与える影響などを伺いました。
相性が少ない「シェルリード線」と、交換による変化が大きい「ヘッドシェル」
スタビライザーやターンテーブルシートに比べれば致命的な相性が少なく、比較的幅広くお薦めしやすいアナログアクセサリーに、「シェルリード線」があります。ヘッドシェルのコネクターピンとカートリッジを結ぶ、僅か数cmのケーブルなのですが、音の変わり方が大きいことにかけては折り紙付きの部位です。
カートリッジで発電された音楽信号は極めて微弱で、スピーカーを駆動するまでに1,000倍程度まで増幅しなければいけません。また、シェルリード線はカートリッジの振動と電磁波へダイレクトに晒されるという、極めて過酷な環境におかれているケーブルです。それで、あの細く短いケーブルの音質差が、最も大きく耳へ届くものと考えられます。
ユニバーサル・タイプのアームなら、「ヘッドシェル」を交換するのがとても大きな音質チューニング要素となります。自重一つとっても非常に大きな音質の違いがあり、オーディオテクニカの『AT-LH-H』シリーズなら、11、13、15、18gと目方の違う同一シリーズ品がありますから、他の条件をそろえながら音の違いを確かめることができます。
また、ヘッドシェルは材質によっても驚くほど音の傾向が違います。オーディオテクニカなら、マグネシウム製のMG10とアルミ製の『AT-LT13a』がほとんど同じ形の材質違いですから、両方買って音の違いを比べると面白いですよ。
他にも木材、カーボン、チタン、セラミックなどのシェルが発売されています。それぞれに持ち味が驚くほど違い、聴き比べると楽しいです。
ヘッドシェルのコネクター部分にほぼ必ず装着されている、ゴム製のリングがあります。あれを付けたり外したりすると、これがまた随分音が違って仰天すること請け合いです。どちらがどうとはいわないことにしますから、皆さんもご自分で確かめて下さいね。
このリングにも、かつては材質と構造に工夫を凝らしたアクセサリーがたくさん存在しましたが、今はもうめっきり少なくなってしまいました。それでもTOP WING社のStatic Eraser Modernを筆頭に、有望な製品がいくつかありますから、探してみられるのもよいでしょう。
カートリッジとヘッドシェルの間に挟み込む、カートリッジスペーサーと呼ばれる製品も、結構な数があります。材質によって随分音が違いますが、アルミ、マグネシウム、鉛、水晶、サファイア、カーボン、布地など、それはもうたくさんの材質が発売されていますし、自作するのも比較的容易なジャンルですから、いろいろ試してみるのも面白いのではないでしょうか。
製品選びに注意が必要な「フォノケーブル」、交換の効果を得やすい「アース線」
「フォノケーブル」は、プレーヤーによって、またトーンアームによって対応する製品が違いますから、交換時には確認が重要です。本体から直出しになっていて、交換できない製品もありますからご注意下さい。
具体的には、本体側の端子がDINと呼ばれるステレオ分とアースまで一体になったものがあります。そして背の低いプレーヤーでは、DINプラグがL字型になったケーブルでないと挿せないということもあります。そして、昨今製品数を大きく増やしている両端RCAのタイプ、以上の3つが代表的です。
https://www.audio-technica.co.jp/product/AT-TC1000
ごくプレミアムな仕様として、XLRジャックが装備されたプレーヤーがあります。RCAよりさらにノイズを抑える「バランス伝送」、またコストはかかるけれど劇的な音質向上を果たすことができる「バランス増幅」方式に用いるための端子/ケーブルです。
片端DINのタイプは信号線と束になっているので、ここだけの改善はできませんが、両端RCAやXLRだと、アースケーブルも非常に重要な音質向上要素となります。
15年くらい前まで、「アース線」はただ「レコード再生のハムを抑える」ためだけのものと考えられてきました。しかし2008年のこと、オーディオテクニカが『AT6205G』という単体アースケーブルを発売しました。当時、フォノケーブル付属でないアースケーブルが発売されることは、ほとんどありませんでしたが、せっかく発売されたものだからと、プレーヤー付属の何でもないアース線と取り替えて聴き比べた時の驚きたるや、大変なものでした。
それ以来、わが家のアースケーブルはもう随分長く、AT6205Gが務めてくれています。今は製品数も劇的に増えましたから、好みに合わせて選ぶことが楽しいジャンルとなっています。
汎用性がある程度高くて比較的買いやすいアクセサリー類といえば、こんなものですかね。適切に使用して、レコード再生をより豊かなものとされるよう、願っています。
Words:Akira Sumiyama
Edit: Kosuke Kusano