回転するレコードに針先を添えるためのパーツであるトーンアーム。 今回はその種類やカートリッジ・ヘッドシェルとの関係について、オーディオライターの炭山アキラさんに解説していただきました。
「レコードプレーヤーは、プラッターとモーター、そしてベルトドライブならドライブベルト、トーンアーム、カートリッジといったパーツがキャビネットへ組み付けられ、それぞれが音質へ大きな役割を担っています。 その中から、今回はトーンアームをクローズアップしてみましょう。 」
トーンアームの役割
トーンアームは、回転するレコードの音溝へいかに安定してカートリッジ、もっといえば針先を添えられるかが使命のパーツです。 レコードの回転エネルギーは想像以上に大きく、トーンアームがしっかりしていなければカートリッジがバタついてしまって、しっかりと音楽を再生することがかないません。
実際に体験した例ですが、トーンアームの支点(サポートといいます)にひどいガタつきのあるトーンアームで、低音のアタックがドンっとくるたびに、ガチャンという音が混じってしまうものがありました。 これではおちおち音楽を楽しんでいられませんよね。
また、柔らかい音の再生を狙ったのか、サポートをフワフワに浮かせた製品も以前あり、それでは例のドンッがまるで締まらず、音程まで狂ってしまうような有様でした。 トーンアームって、本当に大切なパーツです。
トーンアームにはいろいろな形があり、大ざっぱにはストレート型、J字型、S字型に分かれます。 オーディオテクニカのプレーヤーでいえば、AT-LP60XやAT-LP3XBT BK、AT-LPW50BT RWなどはストレート型、AT-LP7はJ字型、AT-LP120XBT-USBはS字型となります。
トーンアームとヘッドシェル
主に海外製のプレーヤーですが、トーンアームのパイプ部がカートリッジを取り付ける先端部品まで完全な一体型となっているものがあります。 これらはこれらで剛性・強度を高くすることが容易なため、ある種の理想主義的な構成といってよいものです。
しかしそれらは、レコード再生の大きな楽しみの一つといえるカートリッジを交換して音の違いを楽しむということには、甚だ不向きなプレーヤーというほかありません。 私自身も何度かそういう製品を使ってカートリッジを交換したことがありますが、それはそれは神経をすり減らしながらの作業を強いられたものです。
その点、日本のプレーヤーはその多くがトーンアームの先端を取り外すことが可能な構造になっています。 その先端パーツを「ヘッドシェル」と呼びます。 たったそれだけのことと思われるかもしれませんが、これでカートリッジの脱着は極めて簡単となり、針先やカートリッジを取り付けるリードワイヤー先端のチップなどを破損させる危険を大幅に減らすことができます。
ヘッドシェルやカートリッジを交換してより音楽を楽しもう
AT-LP120XBT-USBやAT-LP7のトーンアームはユニバーサル型とも呼ばれ、市販されているさまざまなヘッドシェルを取り付けることが可能です。
一方、AT-LP3XBT BKやAT-LPW50BT RWなどに取り付けられているのはそれぞれの機種に専用のヘッドシェルで、他のプレーヤーで使うことはできませんが、メーカーからパーツとして発売されており、カートリッジを何本か買ってもそれぞれ別のヘッドシェルに取り付けておけば、簡単に付け替えて楽しめるようになるのがうれしいですね。
カートリッジ交換の楽しみとは?〜オーディオライターのレコード講座〜
ユニバーサル型のヘッドシェルは製品ごとに音の出方がビックリするほど違い、またカートリッジとヘッドシェルを接続するためのシェルリード線も数え切れないほどの商品があって、これもまた同じカートリッジを使っているとはとても思えないほど音が変わるものです。
トーンアームの調整については、書き始めると長くなってしまうものですから、機会を改めたいと思います。 でも、デジタルと違って調整次第で自分好みの音へどんどん追い込むことが可能なのもアナログの醍醐味です。 皆さんもどんどん “自分の音” を楽しんで下さいね。
Words:Akira Sumiyama