レコードプレーヤーの音質をさらに引き出したいと考えている方におすすめしたいのが、音質の調整や改善に役立つ「アクセサリー」の活用です。アクセサリーには多様な種類がありますが、今回ご紹介するのはレコードの鳴きを抑え、安定した再生を実現する「スタビライザー」と、素材や厚みの違いで音質傾向を変えられる「ターンテーブルシート」。オーディオライターの炭山アキラさんにそれぞれの特徴や選び方、使用する際の注意点など、レコード再生のクオリティを高めるためのヒントをご紹介いただきました。

「スタビライザー」の役割と選び方のポイント

そもそも「スタビライザー」とは何か、というところから解説していきましょうか。プラッターの軸を中心として、レコードの上へ載せるある種のおもりで、レコードとターンテーブルシートとの密着性を高めて、レコードの素材としての鳴きを抑え、どっしりと安定した再生音を得るためのグッズです。

「スタビライザー」とは、プラッターの軸を中心としてレコードの上へ載せるある種のおもり

軽量スタビライザーの中には、レコードを押さえる役割よりも、軸の周りの摺動ノイズを低減する役割を果たすものもあり、同じスタビライザーといってもその役割は1つではありません。

スタビライザーは膨大な商品があり、アルミ、真鍮、錫合金、砲金、鋳鉄、軟鉄、ガラス、カーボン、樹脂、木材など、材質は色とりどりで、自重も100gを下回るものから数kgまであり、自重は軽いけれど軸をしっかり噛み込んで盤を押し付けるタイプもあります。非常にバリエーションの広いアクセサリーです。

近年マイナーチェンジされましたが、オーディオテクニカ『AT618a』は、オリジナル・モデルから勘定すると40年以上作っているのではないかという、超ロングセラーのスタビライザーです。真鍮削り出しをゴムで防振した構成を持ち、自重600gとかなり重めの製品です。

AT618a

ディスクスタビライザー

AT618a

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AT618aをわが家のプレーヤーに用いると、そう派手に張り出す傾向ではありませんが、どっしりと安定してパワフルな、ある意味で玄人好みの音楽再現を聴かせてくれます。

ただし、スタビライザーとプレーヤーの相性はとても敏感で、オーディオテクニカ製のプレーヤーでも、実際に載せて音楽を聴いてみるまで、向いているかいないかが分かりません。AT618aクラスの重量級スタビライザーだと、私の体験では頑丈な金属製プラッターを持つ、総重量も大きめのプレーヤーへ、柔らかめのゴムか金属のターンテーブルシートを敷いた時に、最もいい結果が出るのではないかと考えています。

使ってこそ相性が分かる「ターンテーブルシート」

ターンテーブルシートには古今東西、数え切れないくらいの素材が用いられています。代表的な素材はゴムですが、フエルト、紙、さまざまな樹脂とそれらを発泡させたもの、アルミ、真鍮、砲金、銅、ステンレス、鉄、セラミック、ガラス、石英、カーボン、木質に漆塗り、などなど数え上げると切りがありませんし、それぞれに顕著な音質傾向があります。

使ってこそ相性が分かる「ターンテーブルシート」

また、同じゴムでも薄いものと厚いものではまるで傾向が違いますし、柔らかいものと固いものでも同じゴムとは思えないくらい音質が違います。フエルトも、薄く柔らかなものもあれば、オーディオテクニカのプレーヤーの多くに使われている分厚くやや硬めのフエルトもあり、その両者では、同じ系統とは思えないような音質の違いがあるものです。

レコードの反りを抑える”すり鉢型”シート

元祖はオーディオテクニカの『AT676』でした。ターンテーブルシートを薄いすり鉢型に成型し、300g程度以上の重量を持つスタビライザーを載せることで、レコードの反りを抑えて安定した再生を実現する、というものです。

現在オーディオテクニカ製品は販売終了ですが、ゴム製や金属製の製品がいくつかの社から発売されています。レコードがフラフラに反ってしまって針が通りにくい、というレベルでもこのタイプを使えば、全数ではありませんがかなりの確率で針が楽に通るようになり、同時にレコードの反りをカートリッジが “再生” してしまうことによる、超低域の大振幅が収まりますから、アンプにもスピーカーにも優しいレコード再生となります。

これはスタビライザーと共通するものですが、軽量級のプレーヤーにずっしり重いシートは、経験的にあまり相性が良かったことがないように感じています。金属製プラッターとアクリル製プラッターとでは、また顕著にアクセサリーの向き/不向きが変わりますしね。

レコードプレーヤー周りのアクセサリーは、絶対的なことが本当にいいにくい世界だと、この仕事を続けていると痛感します。

Words:Akira Sumiyama
Edit: Kosuke Kusano

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