オーディオ機器同士をつなぐインターコネクトケーブルで代表的なものが「RCAケーブル」です。中心に棒状の端子がある「RCAピンプラグ」を用いたアナログケーブルのことで、音声用は一般的に赤(右チャンネル)と白(左チャンネル)の目印が付いています。また、同じアナログケーブルには「XLR」ケーブルもあり、構造が大きく異なります。今回はオーディオライターの炭山アキラさんに、このRCAケーブルとXLRケーブルについて基本構造や音質を左右する要素について詳しく解説いただきます。

RCAケーブルは中が1芯か2芯かで音質が異なる

最も一般的なRCAケーブルというのは、アメリカのRCA(Radio Corporation of America)社がその原型を作ったもので、中心部にホット(プラス)の信号端子、周辺部にアースを兼ねたコールド(マイナス)の信号端子が備わっています。前回に解説した「1芯シールド同軸ケーブル*」とほとんど同じといってよい端子です。

*1芯シールド同軸ケーブル:ケーブルの中央に導体を1本だけ配してプラスの信号を送る方式を「1芯シールド」と呼ぶ。絶縁体を挟んでシールドの編組(へんそ・筒状に編み込まれた銅線)が丸く覆うその構造から、「同軸線」とも呼ばれる。

RCAケーブルは中が1芯か2芯かで音質が異なる

このケーブルの両端がRCAの「1芯シールドケーブル」が、最も基礎的なインターコネクトケーブルということになります。国内外で多くの市販RCAケーブルが、この方式を採用しています。ところが、この1芯シールドケーブルは、プラス側とマイナス側の信号のバランスが悪く、それが音質の忠実伝送によくない、という説が根強くあります。

そこで採用されるのが、「2芯シールドケーブル」です。外部からのノイズを防ぐシールドの内側に、プラスとマイナスの信号線が収められた形状のケーブルです。これでプラスとマイナスの信号線は、対称性が確保されました。

しかし、そうなると困るのはシールドです。立派な編組が覆っていても、回路のアースへつながっていないと、外部のノイズを遮る役割を果たすことができなくなってしまうのです。

そこで2芯シールドケーブルでは、マイナス側の信号線に編組を接続しています。それも、入口側と出口側の両方でつないでしまうと、1芯シールドとほとんど変わらない動作になってしまいますから、信号の入口側か出口側、どちらか片端へ編組を “落とす” ことになります。

どちらの端へ編組を落とすか、これはメーカーによって、また製品によって違います。入口側へ落としている社が多いような印象がありますが、どちらへ落としても、音質が不安定になったり機器に不具合が出たりすることはなく、微妙に音の傾向が違うというだけのことです。

各社の2芯シールドケーブルには、信号の流れを示す矢印が印刷されていて、方向性の指定があります。お手持ちのRCAケーブルが2芯シールドタイプなら、一度矢印の逆方向につないでみると、もう一つ好みに合わなかったケーブルが意外としっくりくる音になった、などということがあるかもしれませんよ。

ノイズの影響を受けにくい「XLRケーブル」

インターコネクトケーブルには、RCAタイプの他に「XLRケーブル」と呼ばれるタイプがあります。大ぶりな端子を両端へ備えた、ちょっと無骨な印象のケーブルです。

ノイズの影響を受けにくい「XLRケーブル」

プラス側のみ機器の回路から信号が流れ、マイナス側はアースに落としてある構造のRCAケーブルは「アンバランス・ケーブル」、プラス側とマイナス側の両方とも信号電流が回路から流されているXLRケーブルは「バランス・ケーブル」と呼ぶことがあります。そんな規格ですから、XLRタイプは本来的にはRCAタイプの2倍の物量を必要とする、とても贅沢な方式です。

なぜそこまでして、「バランス伝送」という構成を築き上げるのか。それは、信号を送るときに外から入ってくるノイズを減らすためです。信号伝送では、シールドによって外部雑音が遮蔽されているという前提に立っていますが、それでも侵入してくるノイズがあります。

(RCAケーブルなどの)アンバランス伝送では、そのノイズはそのまま信号に乗ってしまいますが、(XLRケーブルなどの)バランス伝送はプラスとマイナスで逆方向の同一信号が流されていますから、逆相でキャンセルされて信号線には乗ってこないとされています。実際には100%排除できるわけでもないでしょうけれど、よりノイズに強い方式といって間違いないでしょう。

その利点から、バランス伝送は録音スタジオやコンサート、イベント会場など、業務用のオーディオ装置に専ら使われるものでした。しかし最近では、コストがかかるため高級機が中心ですが、私たちが普通に使っているいわゆる “民生用のオーディオ装置” にもバランス伝送を採用している製品は増えてきました。

XLR形式のケーブルへ一般的に用いられるのが、2芯シールドケーブルです。ホット、コールド、アースの3本のピンを持つXLR端子は、ホットとコールドの信号線に2芯の芯線を、アースにシールド線をつなぐのが一般的です。

中には3芯や4芯、あるいはもっと多芯のシールドケーブルを採用しているインターコネクトもあります。例えば3芯は主にXLRケーブルへ用いられていることが多く、信号線とアース線のバランス(対称性)を重視した考え方の設計と考えられます。

実はオーディオテクニカのFLUATシリーズも多芯シールド線で、信号線2本にアース線も2本配されています。つまり、4芯シールドケーブルということになりますね。

オーディオテクニカのFLUATシリーズも多芯シールド線

「2芯シールドや1芯同軸ケーブルでも信号は問題なく伝えられるのに、なぜわざわざこんなに手間とコストのかかるケーブルを作るのか?」と疑問に思うかもしれません。

これは私の拙いながら体験的な印象ですが、ケーブル内部の「力学的な対称性」は、意外と音質に大きな影響を与えているように感じています。FLUATケーブルの構造を見てみると、2本の信号線と2本のアース線が、それぞれ対角の位置に配され、撚り合わされています。とても美しく、力学的に安定した形だと、最初に見た時は私も惚れぼれしました。

FLUATケーブルの構造

もっと多くの芯線を持つインターコネクトとしては、KRYNA社の製品を代表として挙げることができるでしょう。最大で6芯構造のケーブルを製作している同社では、細心の注意を払っても僅かに侵入する高周波ノイズを、信号をケーブル内で折り返して伝送することで打ち消すという、非常に独創的な考え方でケーブルの開発を進めています。そのために多芯ケーブルが必要になるんですね。

スピーカーケーブルでは、2芯と4芯のケーブルが圧倒的多数に上ります。そして、それらのケーブルは「まっすぐ平行に配されているか」「撚り合わされているか」という違いがあります。

特に、4芯ケーブルで芯線が撚り合わされたものは「スターカッド接続」という、それぞれ対角の芯線をプラスとマイナスに用いる構造が多く用いられます。この方法で接続すると、編組で覆わなくても一定のシールド効果が得られ、外部ノイズに強くなるのですね。

また、先ほども述べたように、ケーブルの対称性という意味合いからも音質に好ましい結果が得られるのではないかと、私は推測しています。

Words:Akira Sumiyama
Edit: Kosuke Kusano

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