この世の万物は常に変化するもの。 時に時間は物を劣化させますが、その原因を知っていれば、取り返しがつかなくなる前に気をつけることができれば、大切なオーディオ機器を長く使い続けることができるかもしれません。 これまで3回にわたり、スピーカーやアンプが壊れる原因についてご紹介をしてきました。 ある日突然オーディオから音がでなくなってしまうと、すぐに修理に出さなきゃ!と焦ってしまいがちですが、今回はその前に確認したいこと、試してみたいことについて、オーディオライターの炭山アキラさんに解説していただきました。

オーディオ機器が故障する原因についてご紹介した記事はこちらから。



故障かな?と思ったら

機嫌良く音楽が聴けていたのに、このところ何となく音が悪い。 あるいは、右と左で音量が違ってしまい、ボーカルがセンターに定位しない。 さらには、突然音が出なくなってしまった。 長くオーディオ機器を使っていると、こういうことはままあるものです。

それじゃ急いで修理に出さなきゃ、とお思いの人が多いと思いますが、まずその前に確認したいこと、試してみたいことがあります。

電源プラグは刺さってる?

まず、実もフタもない話ですが、突然音が出なくなった時には、電源が抜けていないか確認しましょう。 コンセントというものは引っ張れば抜けるように作られていますし、うっかり電源ケーブルを踏んづけて、その拍子に抜けてしまうことは、決して珍しくないのです。

また、昨今流行りの小型デジタルアンプやヘッドホンアンプなどは、ACアダプターで給電する製品が多いものです。 この場合、機器の入力端子から小さなプラグが抜け落ちる事故が結構多いものです。

特にACアダプターの入力端子は、つながっているように見えても奥まで刺さっておらず、電源が導通していない場合があります。 音が出なくなったと思ったら、まず確認してみて下さい。

電子プラグのイメージ

そのアンプの不具合、もしかしたら直るかも。

アンプで何となく音が悪い時や左右に音量差が出た場合は、ボリュームやセレクター、バランスコントロールに問題が発生していることがあります。 重篤な障害なら修理の必要が出てきますが、症状が軽ければいわゆる “柔軟体操” 的な対策で直ることもあります。

多くのボリュームは、いわゆる可変抵抗器が使われています。 その接点部分に汚れやサビが溜まると、全体の音質を損なったり、特に小音量で左右に音量差が出たりします。 この音量差を「ギャングエラー」といいます。

特にボリュームを上下させた時、ガリガリ、バリバリとスピーカーから音が出てくるようになっていると、音質にも少なからず影響が出ていると考えなくてはなりません。 そういう状態を「ガリオーム」なんてあだ名で呼ぶ人もいます。 可変抵抗器はバリオームと呼びますから、そこからの連想でしょうね。

ボリュームと同じことは、左右の音量差を整えるバランスコントロールのツマミでも起こります。 特にバランス回路は、日頃あまり使わない人が多いでしょうから、汚れやサビが溜まりやすい部分だと認識していて間違いありません。

ツマミを何度か回してみよう

こういう場合には、ボリュームやバランスのツマミを電源を落とした状態で左右いっぱいまで何回もグリグリ回してやると、接点部分の汚れやサビが落ち、ガリオームや音質劣化、音量差が解消することがあります。 これで直らなければどのみち修理に出さなければならないのですから、ダメ元でやってみる価値のある対策です。

ツマミのイメージ

また、同じくセレクターやスピーカーA/B切り替えツマミも、時折グリグリと回してやれば音質がリフレッシュすることがままあります。 機械接点というのは、音楽再生のアキレス腱なんだなということが、改めて分かります。

最近のアンプでは、セレクターやスピーカー切り替えは、機械接点ではなくリレーを用いたものが多くなりました。 この場合は機械接点よりも経年による音質劣化は少ないようですが、それでもやってみる価値はあります。

ボリュームに関しては、電子的に音量を調節するいわゆる電子ボリュームが採用されていると、ガリオームやギャングエラーが発生する可能性はゼロに近くなります。 音質的には高く評価する人も苦言を呈する人もいる電子ボリュームですが、長く使うことを考えると、利点があるといって間違いないでしょうね。

あとは、接続ケーブルのプラグと本体のジャック、真空管の脚とソケットなど、接点部分は定期的に掃除してやることを薦めます。 これでまたずいぶん音質がアップしますよ。

Words:Akira Sumiyama

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