芯のある中低域が醸し出すリアリティは、まるで居心地の良い堅牢な建物を思わせる。スピーカーにムチが入るステンレス素材のスパイクインシュレーターとスパイクベース。
目を奪うあでやかな大輪の花。それは地下でしっかりと張った根と、すっくと立ち上がる茎があってのもの。
スピーカーが全力を出し切って朗々と歌う。それは、小さな裏方が足元で頑張った成果でもあります。
スパイクインシュレーターで、音の足腰を鍛え上げましょう。
いつものスピーカーが、ムチの入ったかのようにキリッとした姿を見せてくれます。
実は音を作るインシュレーター。
インシュレーターは、スピーカーユニットと接地面とをアイソレートする(隔てる)のが基本的役目。ユニットの振動特性を尊重し、その能力を発揮させようとするものです。
しかし、インシュレーター自身にも固有の振動特性があります。ユニットに接する限り、自身がユニットに与える影響は避けることができません。
ならば積極的に好影響を与えてやろう。こうしてインシュレーター開発は始まりました。
インシュレーターはアイソレートという目的を超えて、音作りに加わるオーディオユニットのひとつになったのです。
素材が音を決める。
ソリッドな塊であるインシュレーターは使われる材料が音の印象を決定づけます。
その素材は大きく分けて、金属・木・ゴム。それぞれ特徴的な音の響きをもたらします。
それぞれどんな音質傾向を持つのでしょうか。
実は今あなたがそれらの材料に持った印象、それが音響的な傾向とほぼ一致するのです。
つまり、硬い「金属」はクリアな印象。肌になじむ「木」はナチュラル。弾力性が特徴の「ゴム」なら軟らかい音。
これらの傾向を踏まえておくと、どのような方向性に音が変わるかをあらかじめ把握してインシュレーター選びに臨むことができます。
「銅」とは異なる魅力の「ステンレス(鉄)」。
これらの材料の中で微妙なニュアンスの違いを豊かに表現できるのが「金属」。
比重や硬度の違いなどの幅の広い特質は、オーディオ界であまた試行錯誤の対象となってきました。
響きの余韻が長く続く性質の評価が高い「銅」。他の金属との合金も作りやすく、数々の音のバリエーションを生んできました。
もうひとつ、私たちの生活を支える金属である「鉄」。クロムを含ませて耐腐蝕性を高めたステンレスとしてよく使われます。
さてその音質は?
硬度が高いステンレスは、銅に比べて振動の余韻の収束が早くなります。輪郭のはっきりした、スピード感のある音を生み出すのです。
中高域の響きがよい「銅」ですが、がっしりした中低域を生む迫力の「鉄」も捨てがたい。これを使わない手はありません。
立ち上がりがよく、輪郭のはっきりした迫力の中低音。
ステンレスの持つこの迫力・エネルギーを味わいたい。この目標の下に開発されたのが、スパイクインシュレーターAT6901ST。
迫力やエネルギーは野放図に解放すればいいというものでもありません。そこで注目したのが、スパイク型インシュレーターの持つ強いアイソレート効果です。
面ではなく点で接地面と接触するため、中低音域における床からの反射が極めて少なくなります。接地面との相互作用が強いと、音の発生時の状態がそれだけ変化を被ります。相互作用を利用して好結果を生むこともあります。
ステンレスの持つ迫力を統御し、豊かでありながらも締まりのよい中低域を引き出すには、接触面を少なくしたスパイク型に軍配が上がります。
スピードのある迫力重視のスピーカーのパーソナリティをさらに生き生きした表情に変えます。
中低域は、音楽そのもののリアリティを左右する、いわば骨組み。表現力豊かな中低域は、雄大な包容力を持って音楽の聴き手を魅了します。
あくまで迫力追求か。異種格闘技の妙味か。
上からの突起を床側で受け取める受け皿となるのが「スパイクベースインシュレーター」。スパイク型のインシュレーターには必須のアイテムです。
どのスパイクベースを使うかで音も変わります。
ポイントは同種の素材をあわせるか。異種素材にチャレンジするか。
中低域の迫力、表現力を徹底して重視するなら、同じくステンレス製のA6902ST。
響きや高域の伸びも捨てがたいなら、真鍮+金メッキ素材のAT6902BR。スピーカーに接しているステンレス素材の性格をメインに、ほのかな華やかさが加わります。
足元を引き締めるシルバーの輝き。位置調整もストレスなく行える高さ18㎜設計の3点支持。
スピーカーはリスニングポイントから最も目に入りやすいユニット。その足元で存在をアピールするインシュレーターは、その美的側面も無視できません。
ステンレス素材が醸し出すシャープなビジュアルは、スピーカーの足元の印象をグッと引き締めます。
セット内容は、ガタつきの心配がない3点支持の6個入り。21㎏までのスピーカーに対応。
3点を前に1つ、後ろに2つという配置がベストポイント。
あとは、端っこに置くか、中央寄りにするかでも音色が変わります。
本シリーズのスパイク+ベースの組み合わせでの全高は、指先の入る高さ18mm。位置調整をストレスなく行えます。 位置を少しずつずらして試聴をくりかえし、好みの音を見つけましょう。
とことん突き詰めてみれば新たな世界が見える。
時には行けるところまで行ってやろう。
不安な気持ちを抑えて行きつくところまでいけば、何のことはない、未体験のゾーンの入口でワクワクしている自分を発見できる。
究極に究極を重ねて、もしちょっと失敗すれば一歩退けばいい。そこがベストポイントだったりします。
いつもの音にちょっと飽きたら、それは思い切ってアタックしてみるチャンスの時。
気軽にチャレンジ。手軽にリベンジ。
これがインシュレーターというアイテムの魅力です。
Words: Kikuchiyo KG